「レディースコミックの女王」と呼ばれる漫画家・森園みるく。その夫で世紀末から2000年代にかけて「鬼畜ライター」として名を馳せた村崎百郎。関係者なら誰もが「仲良し夫婦」と口をそろえるような二人だったが、その幸せな生活は2010年7月23日に起きた「事件」によって突然終わりを迎えた。
村崎が読者を名乗る男に自宅で刺殺されるという最期を遂げたのだ。享年48。犯人は「ゴミ漁り」に関する村崎の著書の内容に「だまされた」と主張し、その恨みが殺害動機になったと供述。数十か所をメッタ刺しにされる凄惨な事件だったが、犯人には精神科への通院歴があり、責任能力なしとして不起訴処分となった。
事件から約7年が経った今年3月、森園が妻の視点で村崎の死を「事件を基にしたフィクション」として描いたコミックエッセイ『私の夫はある日突然殺された』がスマホ・ガラケー向け電子書籍サイト「めちゃコミック」で先行配信され、その衝撃的な内容が多方面で話題を呼んでいる。
同作品では、事件後に「夫は自分の死を予知していた」といった不思議な事実が続々と浮かび上がり、その一方で夫の死を受け入れることすらできない状況下で淡々と行われる事情聴取や現場検証、さらには犯人が不起訴になるという残酷な現実が襲い掛かる。
夫を殺害された妻という立場における緻密な心理描写と鋭い観察眼、暗くならないように各所にギャグを散りばめるサービス精神。テーマの興味深さもさることながら、最愛の夫を殺害された過酷な事件の顛末をここまでの作品に仕上げた作者の技量は「女王」の異名が伊達ではないことを感じさせる。その思いと作品に描かれた不思議な出来事について、著者の森園に話を聞いた。