【人妻と部屋にふたりきり】
この人妻は酒が好きだった。
海外旅行で気が緩んでいるのか、彼女はハイペースでグラスを傾け続け、次第に酔っ払っていった。
しばらしくして飲み会がお開きになると、彼女は小さな声でぼくにこう言った。
人妻「まだ飲み足りません…」
JOJO「じゃあ、宿に戻ってもう少し飲む?」
人妻「うん! やったぁ!」
この夜、ドミトリー(相部屋)に泊まっているのはぼく一人。
異国の誰もいない部屋に人妻と2人きり…。
なんだかいけないことをしているような気がして、そわそわする。
彼女がとる人との距離は平均的なそれよりも近く、ボディタッチも多かった。
語尾にハートマークが付いたような口調もあいまって、余計に無防備なタイプにみえた。
宿の近くの小さな商店で買ったラムのボトルはどんどん空いていき、2人とも完全に酔っ払っていた。
ぼくは当時、日本人の旅行者とそういう関係になったことがなかった。
避けていた訳でもないが、アプローチしたいと思う相手に出会うこともなかったのだ。
言葉が通じない旅行先で、日本が恋しくなってきた時期でもあった。