路上でお金を稼ぐ行為をバスキングという。
演奏や銅像パフォーマーなどがこれに当たるだろう。
路上でお金を稼ぐという意味で、日本食を売ることだってバスキングと言えるのではないだろうか。
ぼくはこれを日本食バスキングと名付けた。
ポイントは、安い、簡単、かつ外国人受けする日本食を用意することだ。
「いやいや、おれ料理とかできねーし」
と思う方がいるかもしれない。
まったくもって心配無用だ。クックパッド先生の言う通りに作業すれば問題ない。
ぼくは、まずツナマヨおにぎり、次にお好み焼きを用意した。
どちらも食材購入に10ドルかかっていない。
結果から言うと、両方とも少なくとも材料費の元がとれる程度は売れた。
ただ、日本食バスキングの目的は売ることではない。
出会うことだ。
極端な話、いい出会いさえあれば、ひとつも売れなくたっていいのだ。
出費はたかが知れている。
以下に、ぼくの日本食バスキングの一部始終を記す。
浴衣に身を包みハチマキを頭に巻いたぼくは、メトロに乗り人が大勢集まるイベント会場に向かった。
移動中から声をかけられたり写メを撮られたり、注目度という点で幸先は悪くなかった。
会場に着いたぼくは、びびりながらも声を張りあげた。
「Comida Japonesa!」
反応は悪くない。
子連れのおばちゃんが話しかけてきて、いきなりひとつ売れた。
やった! 早速売れた!!
嬉しさがこみ上げる。
いやいやいや。そうじゃない。
喜んでいる場合ではない。目的は出会うことだ。
そう分かってはいるものの、売れるとどうしても嬉しくなってしまう。