最近、国際的な社会状況が驚くほど変化し続けている。少し前のイギリスのEU離脱があったかと思えば、つい最近ではアメリカ大統領選では「まさかの」トランプ氏当選という仰天の結末。そして、つい先日はキューバのカストロ氏が死去するなど、世は激変の連続である。
さて、戦前から日本人は海外各地に赴いて仕事をしていたわけであるが、時には現地の当局から目をつけられ、挙句は身柄を拘束されるようなケースまでなったこともあるようだ。昭和6年(1931)7月25日の「東京朝日新聞」には、「女探偵を使って日本人商人を監視」というタイトルの記事が掲載されている。
その記事の舞台となったのは、現在のロシア、当時はソビエト連邦だった頃のウラジオストック。シベリア鉄道の終着点であり、漁業や商業などで栄える土地である。
事件が起きたのは、この年の7月16日の朝、現地で時計などを扱う35歳の日本人ビジネスマンが、ソ連当局によって逮捕されてしまったというのである。容疑は貴金属密売の密売であった。
そして、彼を逮捕したのは、旧ソ連の国家政治保安部「ゲ・ペ・ウ(GPU)」だという。このゲ・ペ・ウとはいわゆる秘密警察で、政府や体制に少しでも批判的な者を片っ端から検挙しては、収容所に放り込んでいたという、一般市民はもちろん公務員や政治家などからも恐れられたといわれている。かのスターリンも、ゲ・ペ・ウを使って政敵や自分にとって邪魔な人物を次々に逮捕させては、次々に処刑したと伝えられている。