アイドル業界最大のフェス『TIF』、大盛況も一部ファンの無軌道な振る舞いでトラブル続出


 初日はPass Code、BELLRING少女ハートと並べた時点で荒れることはアイドルファンの共通認識であり、このセットリストを組んだTIFにも自業自得な面はあった。しかし二日目のSMILE GARDENで大トリを務めた夢みるアドレセンスは正統派アイドル。キャッチーでポップな楽曲が多く、パフォーマンスもそこまで客席を煽ることはない。それにもかかわらず、リフトやモッシュダイブがあちこちで行われる荒れた現場となってしまった。そして前日以上にサイリウムが飛び交う事態となり、ただの迷惑を通り過ぎて普通にライブを楽しんでいるファンに危害を与える事態にもなりかねない状況になった。もはやピンチケや厄介オタたちは、アイドルの個性や、曲やパフォーマンスの傾向に関係なく、ただただ暴れたいからライブに参加していることが浮き彫りになったのだ。

 そして三日目、この危険な傾向はより強くなる。この日、トリ前を飾ったのはベイビーレイズJAPAN。2013年放映のドラマ『あまちゃん』で、彼女たちの楽曲「暦の上ではディセンバー」が使用されたので、アイドルに疎い方でも名前を聞いたことぐらいはあるかもしれない。彼女たちの楽曲も確かにロック色は強いが、必要以上にメンバーが暴れたり煽ったりはしないので、そこまで現場が荒れるイメージはない。しかし、この日はTIF最終日であり、SMILE GARDENのトリ前ということもあってか異様な盛り上がりを見せた。

 筆者はライブの途中で現地に到着したのだが、「夜明けBrand New Days」が始まると、またもや無数のサイリウムが上空を飛び交うことに。無銭エリアを見ると、助走をつけて思いきり振りかぶって有料エリアにサイリウムを投げ込む輩が大勢いた。投げ込まれたサイリウムの数は数百本に及んだのではないか。有料エリアと無料エリアの境目にあるテント内では、BONDSと言い合いをするピンチケの姿があり、すでに場は混乱状態でチケットを買ったファンすらも有料エリアに入れない状況に陥っていた。ようやく筆者が有料エリアに入ると、何とかベイビーレイズJAPANは最後までライブをやり終えたが、主催者側がサイリウム投げ込みの危険性を訴え、これが続くようなら中止にすると明言した。

 大トリを飾ったのはアップアップガールズ(仮)。彼女たちの楽曲はEDMが中心で、盛り上がろうと思えば幾らでも盛り上がれる楽曲も多い。実際、1曲目の「パーリーピーポーエイリアン」はクラブ映えのするアゲ曲だが、アプガは騒然とする雰囲気の中で必要以上に客を煽らずに魅せるパフォーマンスに徹した。その場にいる厄介オタたちも、さすがに空気を読んだのか迷惑行為ではなく真っ当に踊り、サイリウムが飛び交うこともなかった。そしてアプガがラストに選んだ曲は「サイリウム」。この曲を知らない人には皮肉な選曲に思えるかもしれないが、この曲の歌詞はアイドルと応援するファンの理想的な関係性を、サイリウムを通して描いた感動的な内容。本来、サイリウムがライブで担う役割を再確認するかのように、アイドルファンたちは曲に合わせて色とりどりのサイリウムを振って、美しくピースフルな光景を作り出すことで、さすがの厄介オタも黙り込んだ。

 「終わり良ければ総て良し」的な結末ではあったが、問題は山積みだ。もしかすると来年のTIFではサイリウムの禁止や、無料エリアの縮小もしくは廃止もない話ではない。もちろん大半のアイドルファンは楽しい現場を求めているのに、一部の厄介オタやピンチケのために理不尽な規制に縛られることになる。

 成功の陰で様々な課題を残したTIFとなった。
(文=近田弗男)

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