ドアを開けると、そこにいたのは、30代前半くらいの髪の長い女性だった。笑顔はステキでなかなか美形ではあったが、ニッポンイチと言うには…という感じだ。
プレイは、いわゆる裏風俗ならではの流れだった。かなり締まりも良かったが、それでもニッポンイチの名器を持った女というには…。
だからといって、さすがに本人に「どこがニッポンイチなの?」とも聞けない。とりあえず、彼女と話をしてみることにした。
彼女は昼間は会社員をしているとのことで、風俗の仕事は副業だという。以前は正規の風俗店に在籍していたが、「マイナンバーで恐くなって…」裏風俗に転じたそうだ。
実は、最近の副業風俗嬢の多くが、こういった事情で裏風俗に流れていたりもする。ちなみに、「あまり情報を流したくないから」と、店では特に名前も付けずに接客するという徹底ぶりだ。
それほどの後ろめたさがあるからか、この店がどういった経営形態なのかといった核心的なことには触れなかった。それでも「裏だから広告も出せないし、おかあさんが外で声かけるしかないのよね」と話すのだった。
おかあさん…つまり、客引きのおばちゃんのことだ。これをきっかけに「俺もそのおばちゃんに“ニッポンイチの女”が抱けるって誘われたけど、何がニッポンイチなの?」と聞くことに成功した。
すると彼女は、笑いながら事実を打ち明けてくれた。実は、筆者が声をかけられた場所は、日本橋(ニッポンバシ)1丁目で、通称が『ニッポンイチ』なのだ。
だから、その地域にあるモノはすべて“ニッポンイチ”。ニッポンイチの交差点やニッポンイチのコンビニなど、あらゆるものにニッポンイチがついていておかしくないという寸法だ。
思わず笑ってしまった。確かに騙されたのかもしれないが、笑った時点で大阪に軍配が上がったカタチだ。そして、この逞しさがあればこその、風俗で大阪なのだと思った。
(文=子門仁)