ところが、またしても店長は地味な女のコを推してきた。そんなやりとりが数回続き、私もシビレを切らし「なぜだ?」と店長に迫った。
すると店長は、「オキャクサン、ジミナオンナホド、ベッドデ、ハゲシイ!」と説明してきた。
5回も同じ言葉を繰り返す店長に、いつしか私の怒りは消え、逆に脱力してしまった。それは、異国の地でこんな日本語を聞かされるなんて、と滑稽に思えて仕方なかったからだ。
「そんな日本語、どこで教わったんだよ?」という疑問を店長にぶつけたところ、彼は10年ほど日本に住んでいたことがあり、「タケシサン、イッテタ」と教えてくれた。
タケシサン…“世界の北野”こと、ビートたけしである。店長が日本にいたころ、ビートたけしが出演するテレビ番組で日本語を覚えたという。その中に「ジミナオンナホド、ベッドデ、ハゲシイ」があり、気に入ったのだった。
結局、そんな店長に押し切られる形で、その地味な女のコと寝ることになった。料金は心なしか安くなっていた。私自身は激しいエッチができればいいか、と気持ちを切り替えて彼女に臨むことにした。
「ハジメマシテ、ヨロシクオネガイシマス」と、彼女も日本語で話しかけてきた。この店の女のコたちは、全員ある程度の日本語を理解していた。もちろん店長に教わったもので、つまり最初から日本人客を目当てとした店だったのだ。
さて、肝心のプレイの方は、店長の言う通り激しかったかと言えばそんなことはなく、ルックス通りに地味なセックスだった。まず、下着からしてベージュ系で地味なことこの上ない。オバちゃんっぽく、盛り上がりようがなかった。
体位を変えようとすると拒まれ、正常位で腰を激しく動かそうとしても、私の肩を手で押して明らかに歓迎していないことが分かる。しかも、彼女はウンともスンとも言わない。店長が好きなビートたけしの言葉を借りるのであれば、「冗談じゃないよ!」な状態だった。
そんな私の怒りを感じ取ったのか、彼女は下になりながらも唐突に、「ダッテ、アンタ、ビンボウデショ?」と言ってきた。
突然のことすぎて、私の腰が止まったのは言うまでもない。さらに彼女は、「ダッテ、アンタ、ビンボウナフク」と続けてきた。貧乏な服…どうやら、私のボッタクリ被害回避のためのTシャツに短パン、そしてゴム草履という現地スタイルが、みすぼらしく映ったようだ。その結果、“どうでもいい客扱い”となったようで、店長から“それなりの接客”を指示されたようだ。
この店に同行した男が、スンナリと女のコを指名できた理由は“身なり”だったわけだ…。店長の考えや彼女の行動は十分理解できた。たとえ提示がなくとも、ある程度のドレスコードは必要だということだ。その部分は素直に受け入れた。