この女性、数カ月前から赤坂にある結婚媒介所、今でいう結婚相談所を通じ、企業の重役など複数の高収入の男性の愛人となって金品を巻き上げていた。その一方で、別の女性(26)を介して先述の築地の待合を使って何人もの名士と関係を繰り返していたというのである。
その男性たちというのが、貴族院議員や子爵の称号を持つ男性たちばかりだったというから、なんともたいしたものである。
さらに、関係を重ねていた子爵の紹介によって、さらに各界の名士たちとも関係していたということも、彼女の供述によって明らかとなった。
この女性、小さい頃からの美人で、自然と周囲に男が群がってくるほどだった。10代の娘時代にはもうかなり派手な男性関係を重ねていたという。
そして、4年ほど前に早稲田大学理工科を卒業した男性と内縁関係になっていた。しかし、彼女の性欲と物欲は抑えられないものだったのか、夫には秘密でこうした「乱行」を繰り返していたというわけである。
今回の事件では、関係者のほとんどが一流、名門ぞろいだったため、警察は取り調べに「相当苦心を重ね」たと事件を報じる記事には記されている。
一般庶民には情け容赦なく、しかも横柄極まりない警察も、上流階級のエライ人たちには極めて慎重になる。これもまた、当時も今もまったく変わらない。日本という国は、昔も今も、エライ人がふんぞり返っているわけである。いったい、いつになったら庶民に人権が認められる、近代的な国家に育つことができるのであろうか。
(文=橋本玉泉)