確かに、食後にプライベートでの風俗店巡りをしようと考えていたが、唐突に声をかけられたこともあり、かなり怪訝な表情をしてしまった。そんなことはおかまいなしに、その中年男性は「あるよ、NK」と、握った手の親指を人差し指と中指の間から出してニヤリと笑ってきた。
耳を疑ったのは言うまでもない。今、このご時世にNK流なんて存在するハズがないのだから。きっと、何かのボッタクリだろうと思ったが、「どこで? いくら?」と聞き返してしまった。
すると中年男性はアッサリと、「昔と同じ値段でいいよ」と言ってきた。経験則に照らし合わせれば、30分前後で1万円程度だろう。続けてこの中年男性は、背後にあったマンションを指して「ここの○階に行けば、踊り場に人がいるから」と説明した。
正直なところ、半信半疑だった。その階に行ったら最後、すべてを剥ぎ取られるのではないか? そんな不安を抱いていた。しかし、その時の筆者の所持金は1万円ちょっとしかなく、仮にそうなったとしてもネタにすればいいだろうと前向きに考えることにした。そして、中年男性にエレベーターに押し込まれて、目的のフロアへ向かった。
エレベーターのドアが開くと、そこには中年のオバちゃんがいて、ボソッと「大1。6号室」と言った。1万円を払って6号室へ行けということだ。
指示通りに6号室のドアを開けると、中には30歳くらいの、そこそこ美人な女性がいた。「早く入って!」と促されて室内へ入ったが、そこは2DKの間取りで、右側の部屋に案内された。四畳半のその部屋には布団が敷いてある程度で、まさに昔のNK流サロンそのもの。ちなみに、もうひとつの部屋も繁忙期には使用するとのことだった。
もちろん、シャワーなしで股間を拭いた程度でサービスはスタートした。余計なタッチなどもなく、フェラで勃起させてからNK流フィニッシュという、これも昔のままであった。
不思議なもので、懐かしいという感慨はなかった。逆に罪悪感を感じてしまったのは、日本各地の裏風俗街と同様に、筆者自体も浄化されてしまったからなのか…。
それにしても、このスタイルで営業しているのはいつからなのだろう。気になったので女性に聞いてみると、10年前の摘発で、多くのNK流店は許可を取って派遣型風俗店、つまりデリバリーヘルスになったのだという。
もちろん鞍替えした店はルールを守っており、かつてのようなサービスは一切行っていないそうだ。それは「すぐに警察にバレちゃうから」だという。そのことは、現在の浄化された西川口風俗の姿にそのままつながる。
しかし、昔を知っている人は、同様のサービスを受けることができる界隈のソープランドへと流れた。また、ソープ側もここぞとばかりに、マットなしでベッドオンリーの“短時間・低価格”のサービスを提供するようになり、現在に至っている。西川口や近隣の大宮に激安ソープランドが多いのは、そういった理由もあるのだろう。