関係した女性のヘアで座布団を作ろうとした男


 そのうち、「折角毎日遊ぶなら、関係した女の毛を集めて、先づ座布団を一枚造ろう」(同書)と思い立った。

 それからというもの、滝島は連日のように待合を歩いては、女性に頼んでヘアをもらい続けた。だが、1人1本では座布団などいつできるかわからない。おそらく、それなりにまとまった本数をもらったのだろう。だが、それでも1回あたりは、たいした量にはならなかったであろう。

 だが、セックスというものは、体力と精神力を消耗するものである。生理学的には、それほど体力やカロリーを消費するものではないのだそうだが、相当な疲労感を覚えることはセックス経験のある男性ならよく知るところである。

 そんな毎日を続けていた滝島は、日に日に顔が青ざめ、やつれていったという。

 そして、いつしか肺結核を患ってしまう。一方、女性との遊びに熱心になっていたためだろう、タバコ店の売り上げのほうも次第に傾き、とうとう店を人に売り渡すほどになってしまう。それでも、女性漁りのほうをやめることはなかった。

 そんな無茶な生活を続けていた滝島は、昭和4年、ついに亡くなってしまう。享年37歳であった。

 彼が死亡した時、はたしてどれほどのヘアが集まっていたのかはわからない。しかし、座布団1枚分を満たすほどではなかったようである。女性のヘアに殉じた生涯は、あまりに短かったといえよう。
(文=橋本玉泉)

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