M:写真などで見るSMってかなり過激で、「自分にそれができるのかな?」って考えた時期もあります。アソコに錘を吊り下げられるのとか、絶対に痛くてムリだと思ってたんです。でも、実際は頑張れば耐えられるし、楽しい。最初のころは、自分の身に起きていることに驚いている自分がいました。でも、今はSMがとても好きなんですよ。もちろん、セックスも同じぐらい好き。
私は、Mって言われることが多いですけど、性癖ってすごく曖昧だと思うんです。Mの需要があればMになりますけど、乱交パーティとかハプバーの中での複数プレイとなればコマにもなるし。相手にもよるのかな。私は自分のことは野良猫だと思ってます。たまたまご主人様のところにいて、エサをもらっているけど、気まぐれなので突然いなくなったりもする。
――大学ではフェミニズムについて勉強されていたようですが、ご自身の趣味趣向とどう折り合いをつけたのでしょう?
M:フェミニズムの主張は大事だと思いますけど、性癖的には男性に消費されることを欲望しているんです。フェミ的にはストリップもSMもダメなんじゃないかと悩んだ時期もあります。大学のゼミではジェンダー論も専攻していましたし、フェミニズムにはとても興味ありましたけど、自分の今の趣味とは相反しちゃってる。だから、そこで答えを出すよりは、考え方を切り離していましたね。当たり前ですけど、普段の生活で男性に抑圧されたり、セクハラ的な発言をされるのは嫌いなんですよ。
――ステージ上のSMの関係性は、普段の生活とは切り離された非日常であって欲しいんですね。
M:自分が尊重されていることが確立された上で、M女でいたい。日常生活で「灰皿持って、ひざまづく」という主従関係は無理なんです。プライベートのセックスもショーも同じですけど、何らかのスイッチが入ることでMに切り替わる。今のショーパートナーの風見蘭喜さん、さかき藍さん、夜羽エマさんは対等に接してくれます。舞台上では、けっこう過激なことをしますけど、みなさん普段は温厚だし、ステージを降りたらいろいろ気づかいができる方ばかり。そういう良い関係が結べるショーパートナーと一緒に、これからも新たに舞台を作り上げていきたいですね。
黒髪で露出や化粧も控えめ、一見大人しそうな雰囲気のm@rica。ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれる姿勢は、まったくキツさやスレたところを感じさせない。品の良い穏やかなお嬢様といった雰囲気は、インタビューの終わりまで崩れなかった。だからこそ、そんな子が持つギャップに驚いてしまう。しかし、それこそが彼女の魅力なんだと思う。インタビューの後、これから会社に出社するという彼女は、どこにでもいる女の子のように渋谷の雑踏の中にふわりと消えていった。
(取材・文=菅野久美子)
【m@rica】
昼はOLとして働き、夜は過激なパフォーマンスを見せるMモデル。
今後の出演予定などはコチラまで!
菅野久美子(かんの・くみこ)
アダルト系出版社司書房を経てAV情報誌やホスト雑誌、女性週刊誌で活動。
現在フリーのライター。
著書に『アダルト業界のすごいひと』(彩図社刊)がある。
8月10日に2冊目の単著となる『エッチな現場を覗いてきました!』(彩図社刊)を発売。