裏町の夜。酔客はいないが、エステの客引きは2人。週末の夜なのに寂しい限りだ
歓楽街や風俗街の名前は、負のイメージを抱かせないネーミングが多い。しかし、松本(長野県)にあるこの街はあまりにもストレートだ。
その名も『裏町』。
昔は賑わったスナック街も、名前が示すとおり、今では怪しい夜の街となっている。
松本城の東側、国道143号線と平行して走る、大手4丁目付近の一方通行の路地がそれだ。かつては、北国西街道松本宿が置かれた宿場町だったと言われる。
夜、その路地を歩くと、店の灯りは点いているが、街を歩く人影はなかった。遠目にでも駅前の飲み屋街とはまるで別世界で、シンと静まり返り、時間が止まったかのような路地が暗い闇に伸びている。
その路地で見つけた動く人影は、案の定、中国エステの小姐だった。
「オ兄サン、マサジ行ク? サンゼンエン」
どの街でも、録音したかのように同じセリフで声をかけて来る女。駅前の飲み屋街の中国エステがそうだったように、ここも多分“ちょんの間”だろうと踏んで入ってみることにした。