■ある視点
KJI「MIRROR BALLS」は、ライムベリーからメンバー2人とプロデューサーが離れざるをえなくなった事件に対して、ヲタの側からラップでアンサーした楽曲。ヲタの視点から描かれるリリックが、予想外なほど深く胸に刺さった。前述のStereo Tokyoのパーティーピーポー、そしておやすみホログラムや校庭カメラガールなどを手掛ける映像制作チーム・離島と並んで、ヲタとして高いクリエイティヴィティを誇っているグループだ。
■未リリース作品
以下のURLはもう存在しない。
https://soundcloud.com/curumichronicle/navyblue
クルミクロニクル「ネイビーブルー」は、 7月5日のワンマンライヴをもって引退した彼女のラスト・シングルになるはずだったが、諸般の事情のためかリリースされていない。非常に残念だ。無念ですらある。
引退が発表された後に、クルミクロニクルが初めて自撮りをTwitterに載せるようになったことも思い出す。CDだけではなく、SoundCloudやYouTubeに残る断片、そしてライヴでの体験をかき集めながら、私たちは失われたアイドルを「記憶」としてとどめる。
アイドルの引退などの「大切なお知らせ」は連日のようにTwitterに流れてくるが、私が2015年に一番つらかったのはクルミクロニクルの引退だった。楽しい日々を過ごしていてほしいと願う。
さて、アイドルはすでに一定の人々のライフスタイルに組み込まれており、マーケットはある程度安定している感がある。考えてみれば、特典を目当てにシングルを100枚買ったとしても10万円。自動車に凝ったり、遠くまで海外旅行に行くよりは安い娯楽なのだ。
ただ、2015年の終わりにあたって、アイドルのマーケットがこれ以上広がらない予感もしている。「NHK紅白歌合戦」に出場するアイドルを見ても、上がつかえているイメージだ。あるアイドルについて誰もが「大ブレイクした」と感じる状況には、今後なかなかなりにくいかもしれない。
2015年はまだいい夢を見ていられた。いい夢の余韻を抱きながら2016年を生きたいと思う。そろそろ正念場の予感がするのだ。
(文=宗像明将)