今年はまだいい夢を見ていられた ~2015年アイドルポップスベスト10まとめ~

 CDを積ませるのはもう限界だろ。そんなことを、仮面女子の「元気種☆」がオリコン1位を獲得した時点で感じたものだ。リリースは元旦、つまり2015年の冒頭からいきなり、ということだ。

 デイリーチャートであれ、ウィークリーチャートであれ、ヲタにCDを積ませて上位を獲得したとしても、プロモーションにつなげるのはもはや至難の業である。同様の手法が蔓延しているからだ。CDセールスと実際の人気の乖離が広がっていくだけにもなりかねない。

 その一方で、CDをあまり積ませないタイプのインディーズのアイドルが、そこらのメジャーのアイドルよりも、ライヴの動員が安定していることには感心したものだ。BELLRING少女ハートやゆるめるモ!はその筆頭である。

 2015年は、Zepp DiverCity(スタンディング時の収容人員は2473人)が分水嶺になっている場面を何度も目の当たりにした。Zepp DiverCityでのライヴの動員に成功したアイドルもいれば、失敗したアイドルもいた。そして、仮に成功しても、Zepp DiverCityから先の展開はなかなか難しい。興業をメインとすることは王道のようでいて、決して楽な道ではない。

 Twitterを見ていればヲタの動きがわかる時代もすでに終わってしまった。無数のLINEグループをベースにしたヲタの動きは、なかばアンダーグランド化してしまっている。

 個人的には、メジャーのアイドルよりもインディーズのアイドルに、以前よりも音楽的な面白さを感じた1年でもあった。シーンの変化はこうした面からゆっくりと顕在化していくのかもしれない。

 2016年のアイドルシーンは少し険しい予感がする。そんな中で、恒例のアイドルポップス年間ベスト10を挙げていきたい。6年目である。

 
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■1位:Have a Nice Day!×おやすみホログラム「エメラルド」 
 

今年はまだいい夢を見ていられた ~2015年アイドルポップスベスト10まとめ~の画像1※画像:Have a Nice Day!×おやすみホログラム『エメラルド』オモチレコード

 

 
 「東京アンダーグラウンドが生んだ最高傑作」というHave a Nice Day!の浅見北斗の言葉は、決してビッグマウスでは終わらなかった。Have a Nice Day!とのコラボレーションがおやすみホログラムの覚醒を誘発した部分は大きく、「エメラルド」の発表以降、現場の狂騒に火をつける結果となっていく。気がつけば東京でもっとも荒れ狂った現場となっていた。

 おやすみホログラムは、カナミル(望月かなみ)と八月ちゃんによるユニット。「エメラルド」は浅見北斗による作品だが、おやすみホログラムの楽曲群はプロデューサーの小川晃一によるものだ。小川晃一は、サウンドはアンダーグラウンドに根ざしながらも、美しいメロディーを紡ぐ姿勢が一貫している。たとえば、ファースト・アルバム「おやすみホログラム」に収録されている「note」のように。

 

 
 アルバム「おやすみホログラム」に収録されている「揺れた」が、アルメニアのピアニストであるティグラン・ハマシアンに影響を受けていると小川晃一が明かしたときには、謎が一気に解けた気がしたものだ。繊細な音程と美しいハーモニー。おやすみホログラムが、アイドルという枠内で音楽的な冒険を最大限にした瞬間でもあった。

 全国流通している単独名義のCDは「おやすみホログラム」のみだが、OTOTOYでの配信音源、ライヴの特典音源、そして「八月ちゃんEP」「カナミルEP」、さらには小川晃一による「WinterEP」など、音源の数は異様に多い。さらに、グレイトフル・デッドにならった録音フリー、撮影フリーの姿勢により、YouTubeにはすでに膨大な数の動画がアップロードされている。

 9月22日の新宿LOFTでのワンマンライヴをソールドアウトさせたおやすみホログラムには、もっと「上」へ行ってほしい。それは言い換えれば、シーンの未来をおやすみホログラムに託していると言ってもいい。

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