話を聞けば、そのサトシという若者はメルボルンの大学に留学したが、サーフィンが楽しくて没頭した結果、留年。それが日本の親にバレて激怒され、「仕送りを減らされて…。だけど、ビザの関係でバイトも限られてしまって…」ということで、思い浮かんだのが女のコの斡旋だった。
なんでも、パースを徘徊して日本人男性と思われる者に片っ端から声をかけているとか。また、日本人が泊まっていると情報が入ると、ホテルやコンドミニアムの入り口で待ち構えて交渉をしているという。
いくらオーストラリアでは売春が合法といっても、もちろん彼がやっていることはモグリだ。しかも「用意できるのは自分の大学の友達とか、後輩の女のコっす!」と、友人を斡旋しているのだ。同僚にひとりが私の耳元で、「とんだゲス野郎だな」とささやいた。その意見に私も激しく同意した。
しかし、我々3人のうちのリーダーにあたる者がほろ酔いだったこともあり、「おもしろいじゃん! いいよ!」と話に乗ってしまった。
するとサトシは、ここぞとばかりに、「マジっすか! 俺、超嬉しいっすよ!」と畳み掛ける。世界一美しいと言われる街で、あまりにも不釣り合いなやり取りだ。
ちなみに値段を聞いてみると、「日本円で5万円と300オーストラリアドルっす!」と言い出した。
5万円? しかも日本円で? ボッタクリもいいところじゃないか!
呆れて私たちが「断る」と言うと、サトシは待ってましたとばかりに「この値段で一晩、貸しますよ! 3万円でイイっす!」と値下げ交渉を始めた。おそらく、オーストラリアドルは彼女たちに、日本円は自分の懐に入れるのだろう。
私は、正直これでも高いと思ったが、リーダーが「わかった。俺が日本円を負担するから、二人はオーストラリアドルを出して」と言った。つまり、私は150オーストラリアドル、約13,000円を払えばオージー娘と一晩過ごせるわけだ。
20分後、私たちが滞在している部屋のチャイムが鳴った。背後に3人の女のコを連れたサトシが立っていた。約束通りの金額を払うと、「じゃあ、明日の朝に迎えにきます」と言い残し去っていった。