自宅は火災によって焼け崩れ、まだくすぶり続けているような状態だった。そしてその家のなかには、伝次郎の妻・たけ（54）、三男・佐五郎（20）、三女・すえ（13）が遺体となって転がっていた。3人とも体中に斬りつけられた酷い傷があり、佐五郎などは内臓まではみ出ているような状態だった。
一方、伝次郎の長男で同じ村に住む熊次郎（28）の自宅も暴漢に襲われた。熊次郎の遺体は自宅近くの麦畑で発見されたが、全身をズタズタに切り刻まれていた。
また、熊次郎の妻・りえ（26）と3人の子供たち、久太郎（5）、幸太郎（3）、それに生まれたばかり女の赤ちゃんまでも惨殺された。幸太郎と赤ちゃんは首まで切り落とされていたという。
凶行はさらに続く。伝次郎宅から300メートルほど離れた所に住む女性・森本トラ（44）が自宅前で銃殺され、彼女の娘・ヌイ（19）も外出先で撃ち殺された。ヌイは殺されたあとで顔の皮をはぎ取られて放置されていたという。
さらに、同じ村の農業・浅井伝次郎の自宅も襲われ、手製の爆発物が投げ込まれたものの、大雨によって大きな被害には及ばずけが人も出なかった。
翌朝になって、村内に住む博徒・城戸熊太郎（36）とその弟分・谷弥五郎（26）の犯行と断定された。熊太郎はヌイと内縁関係にあったが、ヌイは以前から伝次郎の次男で熊次郎の弟である虎吉と男女の関係にあり、熊太郎の内妻になってからもその関係が続いていた。
さらに虎吉の兄・熊次郎は熊太郎から30円を借りていたが、熊太郎が何度催促しても熊次郎は「金なんて借りていない」と返さなかったらしい。
こうしたことから、熊太郎は松永家や森本家との関係が悪化していった。
