昭和初期の「東京朝日新聞」では、女性読者からの悩みや相談に紙上で答える「女性相談」という企画が連載されていた。
そのなかで、昭和10年10月21日の欄に、24歳主婦からの相談が載っている。
彼女は28歳の夫と2人の娘との4人家族。21歳の時に夫と上京し、以後、夫はまじめに勤め、彼女も編み物などの内職などで働いた。その結果、かなりの貯金もたまり、余裕のある生活を送っていた。
ところが、この年の6月頃、夫がデパートの女性店員と不倫していることが発覚。しかもその女性店員はすでに妊娠までしていた。
夫は最初は妻子がいることを隠して店員と関係し、妊娠がわかると結婚していることを打ち明けたらしい。それを知った女性店員は、「死ぬ、死ぬ」などとわめき散らした。
だが、むしろ問題なのは夫のほうである。この件について、夫は妻にこう言い放った。
「俺は処女というものを知らずに来たのだから罪はお前のほうにあるのだ。処女を捧げてくれた女とは簡単には別れられぬ。もしあれに死なれたら俺は人殺しの罪になる故、今でも時々眠った時うなされる」
この夫、現在の奥さんとは処女ではないことを事前に納得した上で結婚している。そして、処女とのセックスを経験していないというのは、この夫の個人的な事情に過ぎない。だから、「俺は処女というものを知らずに来たのだから罪はお前のほうにある」などと奥さんに言うのは、何の根拠もない、脈絡のない言いがかりである。夫は夜な夜なうなされるなどと言っているが、それも自己責任、100パーセント夫に非があるのは明白である。
しかもこの夫、奥さんとの離婚もいやだと言い張っているらしい。とことん責任の取れない男である。呆れた者であると言っても、過言ではなかろう。