【事件簿】いつの時代もヒドイ男はいるもので…良家の奥方が売春婦志願したワケ


 彼女はもともと、地元では知らない者はないほどの資産家の一人娘だった。20年前に婿養子になった夫と結婚し、現在では20歳の娘と17歳になる息子ももうけた。

 ところが、夫が6年前に愛人を作って自宅に引き入れた。当然、家庭のなかは常にゴタゴタの連続で、気が休まる時もなくなった。そうしているうち、愛人は3人の子までも出産した。

 しかも夫は、妻である彼女に何の相談もせず、全財産を自分の名義に書き換えてしまった。さらにその上、夫は2人目の愛人までも家に連れてきたので、家の中は文字通り修羅場と化した。

 こうした状況に、彼女は悲観して何度も自殺を考えては思いとどまった。そして、手切れ金を渡すという条件で夫に離婚を申し出たものの、これすら拒絶されてしまう有様だった。

 あまりに酷い夫の仕打ちに耐えかねた彼女は、いっそ娼妓になって世の中をバカにして暮らしていこうと思い、身ひとつで警察に駆け込んできたという次第であった。

 この話に同情した署員は、彼女の叔父に当たる人物を呼び出し、彼女の身柄を引き渡したという。

 

20151120ryoke.jpg『東京朝日新聞』大正15年7月22日

 
 いわゆる「世間知らずの男にもてあそばれる」という、しばしば見かける悲劇のストーリーである。こうした悪辣な男の事例は、当時の新聞その他をみると、結構見つかる話である。

 だが、よく考えてみれば、年端もいかない女性が、世間知らずなのは当然である。それは、別に資産家だろうが庶民だろうが関係ない。そして、昔も今も同じである。

 そして、パートナー次第で、人生が大きく変わってしまうという現実も、これまた時代を超えて同じである。将来のある諸氏は、その点をくれぐれもご用心あれと、管見ながら申し上げる次第である。私見ながら。 
(文=橋本玉泉)

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