どういうことなのか? そんな顔の私を見た彼は、「ミタサン、コレ、好きか?」とニヤニヤしながら聞いてきた。“コレ”と言いながら突き出した彼の手は、ゲンコツを握りつつも人差し指と中指の間に親指を添えた形…つまり、セックスのことを言っているようだ。
思わず、「できるのですか?」と身を乗り出して聞いてしまった私に、「もちろん! 地球の男、みんな、スケベです!」と断言するサカタ氏。これもある意味で、「地球は大きいけれど世界は狭い」と思った瞬間だ。
ブラジルにも他国と同様に売春宿はあるという。しかし、「危険な地域になるので、安全に遊ぶのならば、『ボアッチ』に行きましょう!」と、サカタ氏は提案してくれた。
『ボアッチ』とは、ボワッチと表記されることもあるが、日本でたとえると出会い系カフェのようなもの。もしくは、タイ編で訪れたゴーゴーバーのように、店で飲んでいたり、踊っていたりする女のコと直接交渉して連れ出すことができるシステムの店といったほうがわかりやすいだろうか。(参考記事『【世界風俗探訪・タイ編】日本が世界に誇る“アレ”が起こした小さな奇跡』)
気になったのは、「ボアッチでは日本人、モテますよ! ブラジル人の女のコ、日本人好きが多いですよ!!」というサカタ氏の情報だ。たしかにブラジルと日本の関係は深いが、日本人の私を喜ばせるための方便だろう。だが、本当であれば…と、淡い期待が濃厚な妄想となって膨らんでいったのもたしかだ。
サカタ氏が常連だというボアッチに入ると、そこは薄暗く、ボックスシートが10席ほどあった。入場料金として日本円にして2,000円ほどを払う。店のスタッフは、サカタ氏を見るなり、「イツモ、アリガトウゴジマス(いつも、ありがとうございます)」「オトモダテサンデスネ?(お友だちですね?)」と、あやふやな日本語で話しかけていた。見るからにこのスタッフは生粋のブラジル人と思われたが、なぜ、サカタ氏に日本語で話しかけきたのか? 公用語のポルトガル語を使えば話は早いだろうに…。
その謎はスグに解けた。ボックスシートで酒を飲んでいると、入れ代わり立ち代わりに女のコがやってきて、たどたどしい日本語で「オサケ、イカガ?」「ワタシト、ハナシマセンカ?」と言い寄ってくる。それに対して、サカタ氏は、日本語とポルトガル語のミックスで答えていた。
たまらず、「サカタさん、ポルトガル語で話せば?」と言うと、彼は気まずそうな顔で、「私、ここでは“日本人”ということになってるんです…」と答えた。もちろん、それはモテるためだろう。先ほど、「日系だけど、ブラジル人としての誇りを持っている」と高らかに宣言していたハズだが…。