今の若い人に『のぞき部屋』といっても、あまりピンとこないかもしれない。簡単に説明すると、部屋の中央にステージがあり、そこには女性がいて、服を脱いだり、自慰行為を行ったりする。それを周囲に設置されたマジックミラーで作られた個室から観賞するというものだ。
店舗によっては、ブースに小さな穴が開いていて、そこから手を伸ばし、伸ばされ…というサービスもあった。もちろん、そこでセルフフィニッシュを迎えるかは各自の自由で、ビデオボックスの生身の女性版といったところだろうか。これがファッションヘルスの原型だとする人もいる。
一説には、1981年2月に大阪で発祥したとされる『のぞき部屋』。1980年代前半には『ノーパン喫茶』と共に、全国の繁華街に数多くの店が営業していたようだ。当時、それらを総称して『ニュー風俗』と呼んでいたそうだが、これは今の『ライト風俗』と呼ぶ感覚と同じだろう。
その後、ファッションヘルスをはじめ、局部へのリップサービスが主流の風俗店が増加。1984年に施行された風営法の影響に伴い、『ニュー風俗』は廃れていったようだ。事実、筆者が風俗通いを始めた20数年前でも、ほとんど見かけなかった。それゆえ、現在では絶滅…かと思ったら、まだ数軒、生き残っていた。しかも、都内の繁華街で、だ。ということで、勉強がてら行ってみることにした。
まず、受付で2,000円を支払う。その時、ケータイをはじめ手荷物の類をすべて預けるように指示された。どうやら、盗撮をする輩が後を絶たず、このようなシステムを導入しているらしい。
案内されたブースは、70センチ四方といった広さだった。もちろん、狭い。良く言えば、昭和の佇まいを感じることができ、ハッキリ言えば、古くて心許ない内部構造だと思った。イスとティッシュのボックスだけが備えられていたが、部屋の圧迫感で、自然と身体が縮まってしまう。
そんな状況ではあったが、目の前には、マジックミラー越しに躍る女体。当然ながら、ライブ感がある。しかし、鏡という板一枚の壁がステージを別世界のように映し、間近ながらも遠い気がした。なんとも不思議な気分だった。
一応、説明に倣って自慰を試みる。しかし、ブースが狭いことと、店全体に流れるBGMの大きさに集中できず、なかなかフル勃起に至らない。すると、そんな状況を察知したかのように、背後から声をかけられた。