ネット社会の昨今、世界各国が身近になった感がある。しかし、現在、四十代後半以上の世代にとっては世界が遠かった。それでも“身近な外国”はあった。40年くらい前のことになるが、日本のテレビ局がアメリカから買い取った番組の中の風景である。
日本語がアテレコされていたものの、アメリカの家庭にある大きな冷蔵庫に憧れたし、彼らが食べている物に「どんな味なのだろう?」と思ったものである。アメリカの文化がカッコイイと思ったし、輝いて見えた。
だけど、すべてがカッコイイと思ったわけではない。国民性というものだろうが、理解できない文化もあった。たとえば、ドタバタなコメディの中によく出てくる『パイ投げ』だ。それがケーキのようなものと分かると、日本人としては食べ物を粗末にするのはいかがなものかという気持ちが芽生えたのだ。
その反面、「不条理に面白い」と思う人たちもいることも確かだ。日本でもコントの中でパイ投げを取り入れる芸人がいたことが、その答えだろう。
そして、この『パイ投げ』は、一部のマニアックな風俗店では、古くからおなじみのオプションとしても知られている。その理由は、フェチ的な話になるが、女性が汚されることに性的興奮を覚える性癖の持ち主が少なくないということである。
それは、『ウェット&メッシー』と呼ばれる性的嗜好で、正確には着衣の女性を濡らしたり(ウェット)、絵の具などで汚した(メッシ―)状態に興奮するものである。頭文字からWAM(ワム)と略されることもあるフェチシズムである。
つまり、風俗店における『パイ投げ』は女の子を汚すことが目的であり、SM店でM女に対して行うことが多いようだ。