――今は名前が知れ渡っているから先方も了解済みでしょうけど、最初はどうアピールしていったんですか。
「企画単体になったばかりの頃に出した作品の評判が良かったみたいで、そこから各メーカーさんからお話しをいただいて。あんまり面接周りってしなかったんですよ。こうしようって意識した訳ではなく、与えられた仕事を一生懸命やろうってだけでした。ただ、いつも思っているのはカメラというフィルターと、テレビという二重のフィルターでユーザーに映像が届くから、こっちが120%でやらないと伝わらないなと。あんまり熱い気持ちでやってない人の作品って分かっちゃう。だから本当に恋人という体だったら、その時は全力で愛するし、やっぱり気持ちを込めないと駄目。“魅せる”ことができる女優さんはたくさんいるから」
――この世界に入ってから他の女優の作品も観たんですか。
「観ましたね。特にレズ。絡まないから指を挿れないとか、舐めているのも足の付け根とか、完全演技とか、そんな女の子が多かったですね」
――だからこそ春原さんの存在価値が増していくんでしょうけどね。
「ピンだろうが企画モノだろうが、ユーザーがどの作品を最初に手に取るか分からないじゃないですか。だから、どの作品を手に取っても、印象に残るものでありたいと思っています」
――それでも得手不得手ってあるじゃないですか。
「ヤラセ作品が苦手(笑)。『わ~! 乱交だ~!!』みたいな、セックスを遊びとしか捉えない作品も苦手ですね。そういうAVが駄目とかじゃなく、お遊びだからこそ私じゃなくてもいいかなって」
――デビュー当時から、そういう考え方なんですか。
「専属時代から可愛い系だから内容もライトというのはどうなのって思ってました。だから毎月の監督面接では、何をやるか、何を伝えたいか、自分の意見を伝えていました」
――キャリアを重ねてそうなっていくのは分かりますけど、デビュー間もない頃に自分の意見を言えるのはすごいですね。
「クリエイティブなことは好きだし、AV制作はチームだと思っているんですよ。だから、それが通るか通らないかは別として、良い物を作るためだったら立場に関係なくディスカッションすべきだなと。それで使いにくいと思うんだったら、切ってもらっても構わないんです(笑)。良くも悪くもパッケージに名前が出るのは女優と監督だけじゃないですか。だからこそ自分の名前が出るのに適当でいいの? って思います。監督の中には使用尺分だけ編集しやすいように撮るとか、75%の力で、いかに効率的に作品を撮るかって人もいます。時間の制約があるし、製作費にも限度があるから、ここまでって判断も分かるんです。だからこそ私に監督はできないですね。手は抜きたくないし、AVはファンタジーって言われているじゃないですか。でも私はもっとAVにメッセージ性を込めていいと思うし、リアルを出していっていいと思う」
――確かに春原さんはドキュメントAVで赤裸々な姿を晒していますよね。
「4年目になって作品のテイストが変わってきたんですよ。キレイに見せてヌケるだけの映像は他の女優さんでいいのかなと。そうすると流れだけじゃなく、画角まで決まっちゃうんですよね。それが嫌になって、心からぶつかれる作品を心掛けています。そのためだったら『春原未来はいい女優だね』で終わるんじゃなくて、面倒くさい、曲者だなぐらいに思われてもいいんです。せっかく全裸になるんだもん。よく私は自分のことが嫌いなのにAV女優ができるねって言われるんですけど、嫌いだからできるの。自分のことが好きでキレイに見せたい人は芸能人を選ぶと思うんだよね。全裸になるなら心も見せるべきだし、ある意味、私を反面教師として使って欲しい。だから春原未来がAV女優を引退しても、この人生を選んで良くなったか悪くなったかを見て欲しいし、その結果を見て貶したり笑ったりして欲しいから全部見せる。大人がお手本を見せない時代になっているから、同世代で何もかも見せられる人がいてもいいと思っている」