しかし、娘さんから伝わってくる情報だけを聞けば、「男の子の元気のなさが心配だし、逆にオッサンの教師の方が…って心配になる(笑)」のだという。実は娘さんが学校帰りに男子と2人きりでファミレスに入っていく姿を目撃したこともある。その店が1階にあったこともあり、外から遠巻きに娘の様子を見ていると…。
「ドリンクバーだけ頼んで、2人ともずっとケータイいじって、下向いてた。2人きりなのに1度も顔を合わさないのよ(苦笑)」と、アリサさんは苦笑いするしかなかったようだ。さらに、「それがさぁ、けっこうなイケメンなのよ? なのに…アタシが乱入して誘っちゃおうかと思ったわ」と笑っていたが、ふと心配になったことがある。
こういう男の子ばかりが増えると風俗はどうなるのか…。
昨今、若者の風俗どころかセックス離れが嘆かれて久しい。筆者の世代の10代のころといえば“やりたい盛りのお年頃”であり、早く童貞を卒業したかったものである。しかし、現代はセックス以前の男女交際にすら興味がない男子も多いようだ。それ以前に他人との“直接の”コミュニケーションさえ煩わしいと思う若者が増えていると聞く。
「そうなのよね。SNSでは会話できるんだけど、直接は…らしいね、今の男子は」とアリサさん。娘さんから、2人きりというシチュエーションでさえも、ショートメールなどで会話すると聞いたこともあり、それには驚いたという。これはシャイとかそういう問題ではなく、オスとして退化しているのではないか、と筆者はますます心配になってきた。
「だからさ、アタシらのお仕事も、なくなるとは言わないけど、たとえば、人間の本能としての性処理が必要という理由だけで風俗に来たりしてね。そこは無機質にコミュニケーションなしで、ただヌクだけっていう世界になるのかな? まぁ、そうしたらラクといえば、ラクよね、働くほうは…」
といった近未来図(?)を描くアリサさんであるが、そんな味気ない風俗は、風俗として成り立つのだろうか…。そんな心配と同時に、彼女にはもうひとつ、変わりつつある今の若者たちを目の前に気になることがある。それは、
「アタシみたいな10代で子供を産む女性も少なくなるのかな? アタシ、19歳で離婚してシングルになって、この道に進んだけど、そういう女の子もいなくなるだろうね(苦笑)」
ということ。“それは幸か不幸かはわからないけど…”と前置きして、アリサさんのような女性が少なくなることを予想している。
「自慢するわけでもないし、すべてを肯定するわけじゃないんだけど、それでもアタシらみたいな性に好奇心旺盛な10代って必要だと思うんだよねぇ。まだまだ、この仕事を続けるつもりだから、余計にそう思うわ」
たしかに、10代で風俗業界に飛び込んでくる女性には…、語弊があるかもしれないし、誤解を招くことも承知で書けば、“何か”を背負っている女の子が圧倒的に多い。だからこそ、人間的な魅力があるように思えるのもまた事実なのである。
そんな筆者の言葉を聞いて「だよね~!」と笑うアリサさんは、信頼している思春期の娘よりも、今後の風俗のあり方を心配する34歳のシングルマザーなのであった。
(文=子門仁)