「ワンナイトカーニバル」は言わずと知れた氣志團のヒットソングであるが、他のグループがそれぞれに可愛らしく歌うなか、KÜHNは本家ばりの完コピプレイを披露、観客から喝采を浴びた。
この拍手は、正真正銘のエンターテイナーに贈られたものだったと思う。
特筆すべきは、この完コピプレイが周囲のブレインから発せられたものではなく、彼女たち自身の発案によるものだろうということだ。
ここにKÜHNの、他のアイドルとは一線を画した強いタレント性を感じる。「お客様に喜んでもらう」ということに、彼女たちは貪欲なのだ。
そもそもこのメンバーは元々どこかおかしい面々が集まった不思議な集団だった。何しろ湊莉久は2015年のDMMアワードで最優秀女優賞を獲得したNo. 1女優なのに、ツイキャスでKissメイクを嬉々として晒しているし、蓮実クレアは超がつく美形とスーパーボディを誇るにもかかわらず、きらびやかな世界とは無縁な筋金入りのゲーマーだ。初美沙希も愛くるしいマスクとは裏腹に、プロレス観戦のためだけにわざわざアメリカに渡るなど、男顔負けの異常なバイタリティーを発揮している。唯一、美泉咲だけは常識人に見えなくもないが、この曲者たちのリーダーなのだから、穏やかな笑顔の裏側に、きっと何かを隠しているに違いない。
要するにKÜHNは人間として面白いのだ。
今は客の目も肥えている。アイドルがはげヅラを被ったところで、さして話題にならないし、Twitterやブログには、ヘン顔やスッピン写真が溢れているので、「飾り気のない自分」というのも大きな武器にはなりにくい。
つまり、誰かが考えたアイデアの二番煎じでは、もうファンは振り向いてくれないのだ。あの完コピプレイも、後から考えれば、誰もが思いつくパフォーマンスではある。だが、あの日、あの場で演じられる度胸と瞬発力こそが重要なのだ。
「クリエイティブであれ」とは誰彼もが口にする言葉だが、独創的であるためには、自分の立ち位置がわかっていて、今何を為すべきかが見えてなくてはならない。第一線で活躍するビジネスバーソンですら、難しい仕事の本質だ。KÜHNにはそれがある。
セクシーアイドルユニットの称号は彼女たちには小さすぎると私は思う。これからの彼女たちの成長と成功を見守りたい。
(文=色川ザクロ)
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