昭和9年(1934)4月6日、岡山県で31歳の男が警察に逮捕された。容疑は傷害罪だった。といっても、だれかとケンカしたり、凶器で殴りつけたりしたわけではなかった。この男、バージンばかりを狙ってはカネで誘ってセックスを楽しんでいたのだった。
カネで若い女性を釣るような男は、たいして珍しいものではない。だが、この男の場合、「処女1000人とのセックス」という目標を立てて、計画的に行動していたことが判明した。
この31歳の男、地元岡山では有数の資産家で、資産総額は少なく見積もっても100万円は軽く超えていたらしい。当時は、男性の平均月収がまだ95円程度。都内の喫茶店でコーヒー1杯が10銭から15銭の時代である。100万円というと、現在の価値でいうと15億から20億程度の感覚ではなかろうか。
その腐るほどのカネで、若い頃からさんざん遊びまわっていたことと思われる。しかし、それにもすぐに飽きてしまったのかもしれない。そこで思いついたのが、処女ばかり1000人とセックスするということだった。
言い方はあまりよろしくないが、こうした「処女千人斬り」の話は、そう珍しいものではないらしい。男というのは、3人集まって酒でも飲めば、自然と自分がセックスした女性の人数とか、セックスの回数とかを話題にしたがるものなので、そんなコトを言い出す向きも昔から多かったことだろう。
だが、実際に「処女千人斬り」なんて、至難の業である。
そもそも、セックスを千回するだけでも男にとっては大変なことである。現実的に考えてみたとして、妻帯者や特定のパートナーがいる男ですら、毎日セックスをこなしているわけではない。せいぜい、週に4回から5回が限度ではなかろうか。1日に数回のセックスをクリアしても、月に25回程度がいいところだろう。
それを年間続けて300回。千回をクリアするには3年以上かかる計算となる。
しかも、「バージンを千人」となれば、難易度は格段にアップする。いくら体力と精力、そして財力があったとしても、何年かかるか見当もつかない。セックスの経験がある男なら、その程度はすぐに理解できるものである。