【事件簿】15歳少女を集団でレイプ! 凶行後のあまりに悲惨な状況


 父の峰五郎が驚いたのは言うまでもない。そして、彼女の口からその犯人たちが、同じ村に住む谷吉(20)、赤蔵(20)、房次(20)、金作(22)、喜十郎(21)、龍太郎(22)ら総勢17人であることを聞いて激怒。男たちを訴えると言い出した。

 これを聞きつけた村の知人たち数名が心配して、犯人の男たちとの交渉に当たった。そして、男たち示談金として現金にして合計75円を支払わせた。

 当時の価値を現在に置き換えることは難しいが、およそ明治36年頃の1円は現在の2万円程度と考えられよう。すると、当時の75円は現在の150万円程度ということとなろう。

 この75円だが、記事にはこの金額で示談にまとめたとの旨しか書かれていない。もし、この金額でことをすべて収めろということであれば、なんとも酷い話である。

 おこめは単にレイプされただけでなく、瀕死の重傷を負ったわけであるから、明らかに強姦致傷である。ちなみに、旧刑法では強姦は軽懲役(6年~8年)で傷害は重懲役(9年~11年)となっている。現在の刑法では、強姦致傷は懲役3年以上または無期懲役が科せられる重罪である(第181条)。

 さて、話はこれで終わりではない。犯人の男たちと交渉にあたった者の一人が、峰五郎に70円のカネを貸していた。そして、犯人たちから受け取った75円から、70円を差し引いてわずか5円を峰五郎に手渡したという。

 これには峰五郎も愕然としたようだ。たった5円では、重傷の娘に十分な治療を施すこともできない。峰五郎はただ毎日、寝床に臥した娘を前に涙を流し、犯人の男たちを恨むばかりだという。

 その犯人どものなかには、資産家の息子たちもいるというから、峰五郎にはますますやりきれない思いだったことだろう。

 記者も、犯人たちを「人非人」と、示談金から勝手に抜いた住民を「無慈悲千万」「真心なき仲裁人」と呼んで批難しているが、はたして、これらの者たちはその後どうなったのであろうか。

 今日でも、悪逆無道の限りを尽くしながら、大手を振ってのうのうと暮らしている者はいくらでもいる。弱い者が泣き寝入りしなければならない状況は、この事件から100年以上経た今日でも、まったく変わっていないと筆者は実感するものである。
(文=橋本玉泉)

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