オリラジは8.6秒バズーカーを“一発屋地獄”から救えるのか…


 2010年といえば中田のインテリキャラや藤森のチャラ男が徐々に認知され始めたころ。ようやく光明が見え始めた段階にして、中田は自らの境遇をここまで客観的に見つめていた。そして昨年10月に放送された『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)で改めて一発屋となってしまった要因について語った。

 単純に飽きられてしまったから、そもそも芸人として未熟だったなど一発屋にはさまざまな原因が考えられる。しかしそれを中田は、たったひとこと「天狗になった」ことだと表現した。続けて「天狗とは特別扱いを当然だと思っている状況」だと説明。自分が特別扱いされていることすら気づかない状態になっていたと話す。

 その典型的な例として自身のライブDVDを出す際、「普通の笑い作りたいんじゃないんだよ、時代を作りたいんだよ!」と言い放ち、映画1本分並みの予算を使った。中田はそういうことが普通に許されてしまうのが“天狗”という現象だと熱弁をふるう。当然ながら、その予算を回収することはできず、天狗の鼻は見事に折られることとなってしまう。

 最盛期にはレギュラー番組を19本持ち、ゴールデンタイムの冠番組を同時に3本抱えたが、そのほとんどを失ったオリラジ。いまでは見事な復活を遂げた彼らだが、そのブレークと挫折に加えて、もがき苦しむ姿と共に変化や成長をここまで視聴者にさらした芸人も珍しい。そして何より、ここまで自らの境遇を冷静に見つめ、その分析をバラエティ番組で赤裸々に語るという“芸”にまで昇華させたのは中田くらいだろう。

 中田は一発屋芸人というものは誰も避けられない“現象”だと自戒の念を込めて語る。19日放送の『櫻井有吉アブナイ夜会』(TBS系)でも、ハチロクと共にゲスト出演した藤森は、「いつか飽きられるのは間違いない」「どうしようもない」と伝えていた。自らの境遇と重なりすぎるハチロクだからこそ、一発屋の自覚を促して、その宿命から救いたいと思っているのだろう。話題となったオリラジによる「ラッスン」の“完コピ”も、「周囲が盛り上げているからこそ、お前らは売れているんだぞ」という戒めにも見える。中田にとってハチロクは可愛い後輩であると同時に、最速ブレークを果たしながらも天狗にならなかった芸人はどうなるのか、という“実験”なのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
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