実は、以前から名古屋に来る度に感じていたことがある。それは、「豪華なモーニングセットを始め、風俗店スタッフの丁寧な接客態度や女のコのサービスなど、名古屋人のサービスともてなしの精神は日本一じゃないか」。それがこのマンションには集約されていた。
どこか、オモシロそうな店があれば入ってみようと、エレベーターで最上階に上り、外階段を使って上から一階づつ見学しながら降りて行くと、前から目星を付けていた某店も確認できた。多くの店先に店員の姿はなかったが、1軒だけ店員と出くわしてしまった店があった。階段室から廊下をのぞくと、コワモテ店員と目が合ったのだ。
「どこかお探しですか?」
思わず、
「案内所があったと思ったんですけど…」
とっさにそう答えると、コワモテは急に視線を外し、
「知りません」
無下にそう答えた。

かつては確かにマンション2階に無料案内所があったが、2012年11月、県風俗案内所規制条例違反で摘発されている。客を風俗店に案内するのは条例に抵触するのに、風俗店はおとがめなし…? この地域はオフィス街のため、学校や病院から風営法で定められた一定距離離れているので、法的には風俗営業が可能な地域となっているのだ。そして、前述した気になっていた店というのは、ノーマルなヘルスコースの他に“VIPコース”という、怪しい響きのコースがある店。はたしてVIPコースとはどんな内容なのか、それは客側からお願いしなくても名古屋式のもてなしが受けられるコースだった。
奇妙な建てものには、摩訶不思議な出来事が待っている…。

(写真・文=松本雷太)