「今回のシングルの特筆すべき点は、なんといっても作詞作曲がつんく♂じゃないことでしょう。彼女らをはじめ、モー娘。やBerryz工房などのハロプロ勢の楽曲の大半は彼が書くことが決まりでしたが、周知のとおり、現在は病気療養中の身。今回のシングル・リリースはハロプロ!運営側としてもかなりの冒険的試みであったはずですが、見事、好成績を収めることができ、今後の方向性という意味でも大きな収穫になったといえるでしょうね」(前出同)
ちなみに「大器晩成」の作詞作曲はシンガーソングライターとして活躍中の中島卓偉(なかじま・たくい/元ヴィジュアル系バンド『MAGGIE MAE』のヴォーカル)、「乙女の逆襲」は人気ヒップホップ・バンドの『TOKYO No.1 SOUL SET』の川辺ヒロシ(奥さんはアンジュルムと同じアップフロント・グループ所属の加藤紀子。今回の作曲依頼にあたっては、彼女の仲介があった由)が作曲、元電気グルーヴのメンバーにして売れっ子音楽プロデューサーのCMJKが編曲に関わっている。
それでは、今回の彼女らの勝因について、改めて分析するとどうなるのか。芸能ライターの織田祐二氏に聞いてみた。
「『大器晩成』に関しては、単純に一度聴いたら耳から離れないメロディーのキャッチーさといえばそれまでですが、ひとつ言えるのは、元々この曲は彼女らのために書かれた曲ではなく、中島自身が歌うために作られた曲ということ。彼自身レコーディングしたものをアップフロントのディレクターが気に入り、採用したという経緯があり、完全に男性向けの歌詞、サウンドという点が斬新です。また、打ち込み全盛の昨今、しっかり生ドラムが入っているのも通好みの仕上がりといえます。いわゆる彼女らのファンやアイドル・ファン以外のリスナーの心にも響いたという点がこの好結果を生んだのでしょう。一方の『乙女の逆襲』もいい楽曲ですよ。かつてバンド・ブーム時代の伝説のガールズ・バンド『パパイヤ パラノイア』を彷彿させるような冒頭の大仰なサウンドがなんとも印象的です(笑)」
つんく♂サウンドの熱烈信者のファンからは、当初リリースにあたって、危惧する声も多く聞かれたようだが、結果的にそれらの声を超越してしまう楽曲に仕上がったということなのだろう。むろん、9人組となった彼女らのフレッシュな魅力が今回の大ヒットの要因にあることも紛れもない事実だ。
「ステージングにしろ、MVにしろ、特に奇をてらうことなく、プリミティブながらも楽しそうに歌い踊る姿は感動すら覚えます。新生アンジュルムのスタートにこれほどふさわしい幕開けのサウンドはないでしょう」(織田氏)
なお、「大器晩成」はフジテレビ系『めちゃ×2イケてるッ!』のエンディング・テーマ。かつて、同番組で起用され大ヒットした大塚愛の『さくらんぼ』のように、ロング・セールスを記録する可能性は十分にあり、今後のチャート・アクションには大いに注目したいところだ。
(文=ニイゼキユウジ)