「たとえば飲食店のテレビで何か番組が放送されているとき、その画面より、それを見ているお客さんの表情を見てしまいますね。やはり一般の視聴者がどこでどんなリアクションをするのか気になるんです。ただ最近ではスマホをいじっていたり、友達との会話に夢中だったりとテレビに無関心な人が多い(笑)。自分が関わった番組に誰も反応を示さない場に出くわしたら気分は最悪ですよ。
また、小さいことですが、放送作家仲間の多くがTwitterの自己紹介欄に現在担当しているテレビ番組を書きこんでいます。しかし知名度がなかったり、あまり人気のない番組に関しては、わざと外すことがありますね。反対に、担当していた番組が打ち切られても、それがネームバリューのあるものだった場合には、残しておくこともあります。ただの見栄ですが…」(放送作家)
華やかに見える業界人も案外、細かい点に気をつかっているようだ。さらに別のテレビマンはこんな悩みを打ち明けてくれた。
「普段、バラエティ番組ばかり作っていると、家では“笑い”が一切ない番組を見てしまいますね。NHKの硬派なドキュメンタリーとか。視聴者を笑わせたり、驚かせたりすることを目的とする番組をずっと作っていると、環境映像のようなボーッと見られるものが無性に見たくなるんです」(制作会社ディレクター)
テレビ業界に身を置く人間には、さまざまな“さが”があるようだ。一般的に理解できないような感覚が多かったように思えるが、番組作りでは視聴者の共感を得るようなものを目指してもらいたいものだ。
(文=今井良介)