アイドル界では、AKB48の握手会や選抜総選挙をはじめとした「複数売り」を前提にした特典商法が流行している。だが、ももクロは握手会をしない方針でCDの売上を無理やり伸ばす企画もせず、そのアイドル界で異端ともいえるスタンスがファンにとっての誇りでもあった。それがもろくも崩れ去ったことで「ももクロも落ち目か」といった声が上がり始めている。
また、毎回のように奇をてらった演出を凝らしてきたもののファンは食傷気味になっており、ここ数年は「ももクロ飽きた」という言葉がネットに数多く書き込まれるようになった。熱狂的ももクロファンとして知られたニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手(26)もTwitterのプロフィールから「モノノフ(ももクロファンの通称)」という文字を削除しており、モノノフ卒業か?と一部で報じられている。
ももクロの凋落が危惧される状況だが、情報誌「日経エンタテインメント!」(日経BP社)が発表した「2014年アーティスト別・年間ライブ動員数」ランキングでは、ももクロがAKBを抜いて女性アイドル部門1位を獲得。316公演で37万人動員のAKBに対し、ももクロは13公演で48.6万人と数字だけでなく内容でも完勝した。
ファン離れが指摘される一方でライブ動員はアイドル界トップという状況は不思議に思えるが…。
「CD売上の減少はライト層のファンが離れてきていることを意味します。ライト層が興味を失ってもコアなファンが大量買いしてくれるAKBと異なり、ももクロが複数買い戦略をしてこなかったために起きた現象。しかし、ずっと彼女たちを支えてきたコアなモノノフたちは残っていますから、ライブは相変わらず盛況です。この状況はレコード会社や事務所サイドも分かっているでしょうから、だからこそ、禁じ手にしてきた『狭く深く』のコア層を狙った複数買い戦略を解禁したのでしょう。これはCD売上の回復が見込めるものの、ファンの信頼を裏切るような行為でもありますから、コアなモノノフたちに見限られて屋台骨がグラつく危険性もある」(前同)
ももクロの名物マネジャー・川上アキラ氏は、今年2月の産経新聞のインタビューで「記憶に残る最高のエンターテイナーを作っていきたい」「(ももクロは)結婚などを経ながら長いスパンで活動していきたい」などと抱負を語っている。だが、レコード会社や事務所が目先の利益にとらわれてコアなファンを裏切ってしまえば大切な支持基盤を失い、その目標は絵に描いた餅で終わってしまうだろう。いずれにせよ、ももクロにとってもファンにとっても今年は重要な転換期となりそうだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)