――劇場版のヒットによってハマジムの業績に影響はなかったんですか。
「これだけで会社の業績が上がるってことはないですよ。ベースになるAVは相変わらずの売り上げですもん。まあ底上げ的に助かった部分もありますけどね。だからウチは社員さんを二人卒業させた後、印刷やプレスを見直して経費を削減しました。とにかくAVは売れないですよ。ネットの無料動画もあって、どんどんDVDの売り上げは落ちて、どこのAVメーカーも大変です。かと言って配信のほうもDVDより数は出ますけど、利益が少ないんですよ。これは慢性的なことだし、かと言ってDVDがなくなる訳ではないでしょうし、あとは体力勝負ですよね」
――『2013』のヒットをキッカケに、出演監督たちの撮ったAVの上映会も増えました。中でもバクシーシ山下監督のV&R時代の作品は反響も大きく、上映会の度にソールドアウトという状況です。
「当時から山ちゃんの作品は評価されていたけど、今よりも性やAVに対する見方が厳しかった時代だから見る人も限られていた。でも20年経って中和されたというか、音楽好きの若者がロックの歴史を遡るように、昔のV&Rの作品を見て、こんなに面白いAVがあったんだと新たに発見しているのではないのかなと。『2013』も今のAVに蔓延するオナニーをさせる目的だけに特化した無機質なセックスへの反動もあって、血の通ったセックスが新鮮に映っていると思うんですよね」
――そんな中、「BiS」の解散を追ったドキュメント『劇場版 BiSキャノンボール2014』を撮りましたが、どういう経緯で話が始まったんですか。
「『フラッシュバックメモリーズ 3D』(松江哲明監督作品・2012年公開)のプロデューサーで、SPACE SHOWER TVの高根順次さんからお話を頂いたんですけど、高根さんとは松江君を通じて面識があったんです。大橋仁君の写真集『そこにすわろうとおもう』の刊行記念トークイベントで、僕が撮影した写真集のメイキングを上映したんですけど、それを観た高根さんから『今度、スペースシャワーでBiSの解散ライブを追うのでドキュメントを撮ってくれませんか?』というお話があって。ちょうど『2013』の編集をしていた真っ最中だったんですけど、最初は断ったんです。今までのBiSの成功だったり失敗だったりをまとめるような、通常の解散ドキュメンタリーを撮る気はなかったですからね。でも『2013』が出来て、ヒットして状況が変わったんですよね。ずっと断ろうと思いながら2014年5月になりまして、ちょっと待てよと。テレキャノの続編を撮る気はないけど、このままやらないことの物足りなさもあったんです。BiSのメンバーは6人だし、テレキャノ方式で僕一人ではなく6キャメでやればいいんだ、それで『2013』のメンバーを入れてという仕組みがパッと結び付いたんです。そうすればBiSの歴史を振り返る必要もないし、よーいスタート! で僕たちが出ていくところから始めればいい。なおかつテレキャノのセルフコピーをしようと。そう考えて気が楽になったんです」
――2015年も『2013』の上映会は続いていますし、『劇場版 BiSキャノンボール2014』の全国上映も続々と決まっています。
「僕としては早く通常のAV業務に戻りたいですよ。面接に来る女の子のスケベさを見極めてバーン! とハメる。早くAVのぬるま湯にドップリ浸かりたい(笑)。それだけで、ずっとメシを食ってきたんですからね。どんどんAV業界は冷たくなって、システム化して工場仕事になっている。でもハマジムは今も手縫いで女の子に合わせて採寸するオーダーメードのようにセックスを撮っている。そうじゃないとウチのような小さいメーカーは生き残っていけないと思うし、『2013』を見に来てくださるお客さんを見ると、それが正しかったと実感するんですよね」
(文=猪口貴裕/写真=金子山)
監督/カンパニー松尾
出演/プー・ルイ、コショージメグミ、ヒラノノゾミ、テンテンコ、ファーストサマーウイカ、カミヤサキ、渡辺淳之介、カンパニー松尾、バクシーシ山下、ビーバップみのる、タートル今田、梁井一、嵐山みちる
日本/2015年/企画・制作 有限会社ハマジム
製作/宣伝/配給:SPACE SHOWER NETWORKS INC.
公開劇場/テアトル新宿、他にて全国上映。詳細は公式サイトまで。
公式サイト:<http://bis-cannon.jp/>
『劇場版 テレクラキャノンボール2013』
出演/神谷まゆ、新山かえで、仙台&札幌の素人20人
監督/カンパニー松尾
品番/HMRB-001
収録時間/132分
セル価格/4104円(税込)
発売日/2015年1月31日
発売/HMJM
ブルーレイ+DVD2枚組+オールカラー特製ブックレット付き
ハマジム公式サイト<http://www.hamajim.com/>