■2位:Peach sugar snow「人魚 ~泡になって消えても~」(K&Mミュージック)
私はローティーンアイドルにはあまり興味がないのだが、この幼い3人の少女がウィスパーボイスで歌う「人魚 ~泡になって消えても~」は中毒になったかのように聴き狂った。山梨に潜む禁断の秘宝に触れたような気分だ。作詞作曲はシンガーソングライターの小林清美。編曲はBELLRING少女ハートも手掛ける宇田隆志が行っており、シンセベースの動きが実に心地良く、ウィスパーボイスとの対比がこの楽曲の美しさを生み出している。
そして小林清美による歌詞はケチャポイント、いわゆる落ちサビでこう歌う。「どうしてもどうしてもダメなら/あなたを殺さなければ 私は消える」。人魚の伝説をモチーフに大人びた恋を歌わせ、さらにそこに「死」を潜ませる。愛らしく、不穏であり、夢中にさせられた。
■3位:アイリス「魔法の呪文」(MORADO MUSIC)
アイリスは、2013年に解散した仙台のテクプリのメンバーのうち3人が再スタートさせたユニットだ。他にも同じ読みのアイドルグループ「i☆Ris」がいるために「アイリス(by MORADOLL)」とも表記される。
聴いて驚いたのは1980年代マナーの完全なディスコ・サウンドで、ヴォコーダー、コーラス、ギターのカッティング、コンガ、ストリングスの音色など、サウンドの隅々まで練り込まれていたことだ。いつ仙台にクインシー・ジョーンズが転生したのか(まだ存命中だが)と作編曲の名を見てみると、宇多田ヒカルの1998年のシングル「Automatic/time will tell」の「time will tell」の編曲を森俊之とともに手掛けた磯村淳。航空力学(※http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20140201)によれば仙台長町にファンク研究所なるものがあるそうで、そこから調べると仙台のファンク・コネクションが浮かびあがってくる。同じく磯村淳の作編曲によるカップリング「アイリス」もせつなくも爽快なソウルナンバーだ。
私はテクプリ時代よりも「魔法の呪文」のブラック・ミュージック路線のほうがはるかに好きだったのだが、残念なことにこの路線は長く続くことはなかった。一瞬で解けた「魔法」ゆえに輝きを放つシングルだ。
■4位:ゆるめるモ!「あさだ」(YOU’LL RECORDS)
田家大知のプロデュースのもと、気の触れたかのようなペースで作品をリリースし続けるゆるめるモ!。田家大知の音楽的なアイデアの豊かさについては私によるインタビュー記事(※http://realsound.jp/2014/08/post-1025.html)を読んでほしいが、メンバーによる派生ユニットも含むと2014年だけで7枚もCDをリリースしている事実にまずは震撼してほしい。隔月というペースどころではない。
その中でも「Electric Sukiyaki Girls」収録曲の「あさだ」を選出したのは、音の間を重視したハシダカズマ(箱庭の室内楽)によるサウンドと、ゆるさを失わない小林愛の歌詞が秀逸であり、特に鳴らされ続けるカウベルの音の中毒性が尋常ではないためだ。ジャケットの通りESGオマージュのサウンドであり、ベースラインも最高。先述のインタビューで田家大知は「『あさだ』でみんなでカウベルを叩いて、よだれを垂らしながら恍惚の表情で宗教感を出すほどには至れていない」と述べているが、自宅レベルではそう成り果てたヲタがいるのではないかとも想像してしまう。
2014年大晦日にリリースされる「SUImin CIty Destroyer」では、アイドルポップスにありがちな「MIXを打てるか打てないか」という問題を超越した次元へと突入している。豪快だ。