安倍政権が進めてきた経済政策、いわゆるアベノミクスだが、結局は「失敗だった」という見方が大勢を占めているようである。その失態をごまかすために、安倍政権はいきなり年末に解散総選挙などいう暴挙に出る構えだ。ただでさえ忙しい年末に選挙などとは、それだけでも庶民生活を無視しているというほかはない。
さて、アベノミクスによる「成果」に対しては、実感がなかったというのが本音であろう。円高から円安への転換があった。長らく続いた円高が円安に転じたことで、株価が上がり、そして輸入に依存していることから諸物価が上がった。株価については庶民には実感のないことであり、円安を喜んだのはトヨタ自動車などの大企業ばかりだった。そうした大企業の業績向上があったものの、膨大な数の中小企業では厳しい状況に変わりはなく、「景気はよくなっている」との報道とは裏腹にサラリーマンの給与はまったく上がらなかった。また、円安による物価上昇についても、庶民には迷惑な話だったが、実際にはなんともぼんやりとした印象しかなかった。
しかし、円安の影響をダイレクトに実感するような場面も現実にあった。バイアグラやそのコピー薬の愛用者の間では、円安は相当に評判が悪い。
数年前から、個人輸入の形で購入できるED治療薬が話題となっていた。その元祖であるファイザーのバイアグラはもちろんだが、むしろ人気なのがインド製のコピー薬だ。成分はバイアグラとまったく同じだが、インド国内の法律によって製造プロセスが異なれば違う製品と認められるため、バイアグラのコピーであるカマグラや、後発のレビトラやシアリスといった製品のコピーも続々と登場。本家と成分がまったく同じにもかかわらず価格が格段に安いというメリットから、さらに人気が高まったものである。
ところが、アベノミクスによる円安の影響で、このコピー版ED薬の値段が高騰しているのだ。