エロマンガから妖精が出てきたらどうする?
びっくり展開、だけども強烈にエロい。中毒性抜群の田倉まひろワールドを堪能しよう。
田倉まひろ著『エロマンガの妖精』
エロ漫画の楽しみの一つは、性のファンタジー!
絶対できないことを描いてくれるからこそ面白いし、興奮する。そこが醍醐味ですね。そういう意味でファンタジーとしての性が時としてリアルよりもエロテチックなことがあります。
今回紹介する田倉まひろ氏は、「ファンタジー」「笑い」「オチ」を詰め込むことを得意とする作家です。今まで出た作品集でも体のパーツを組み替えた人造人間エロ漫画「カスタムゾンビちゃん」などかなり特殊なラインをひた走っており、事前知識なしで読むと仰天するかもしれません。
今回ずば抜けて特殊なシチュエーションを描いているのは「ようせいさん X-RATE」という作品。溜りに溜まった童貞力と失われた精子の魂とがうんちゃらかんちゃらと交じりあい生まれたエロ漫画の妖精です。
この妖精、マロエさんはエロ漫画の妖精ですからもう有無を言わさずエロシーンに突入します……が、そうです。妖精なんです。手のひらサイズですよ。チ●コにしがみつくとちょうどいいサイズですよ。
最初の方はまあ小さいチンコをその妖精がまさぐって大きくして射精……これだけでもかなり変化球なエロなんですが、そこからのアクセル踏みっぱなしっぷりが半端ではありません。「本番のないエロマンガなんて、エロマンガじゃないッスよ」と言って明らかに小指すら入らないようなサイズの性器に、チ●コをツッコミます。
つまりどういう状態になるか。生きて感じるオナホール状態です。絵的に新しい世界を見た感で溢れ返っておりますが、ここで終わらないのが田倉流。アナルセックスにも挑みます。もう身体構造とか無視して、お尻から入れて口から精液が出る有様。
これだけ文字で書くとグロテスクに感じるかもしれないんですが、マンガのマジックなんですよ、マロエのテンションの高さもあってこれがすごくエロい。確かに初めてのエロマンガとして読むにはハードコアすぎるかもしれませんが、読み終わったあとに「これは……ありかもしれない」と思わせるだけの力を持っているからこの作家はすごい。
ほかにも現在の流行り(?)に乗ったような、強引にひどい生き物が魔法契約を迫ってくる「メチャポジ魔女ステラーポポナ」では、ポジティブの力を集めて変身する、という設定がなぜか輪姦レイプに発展。ポジティブゲージは、輪姦によってたまるというものすごい展開になっています。話の入り方、レイプシーン、変身シーンととにかくハイテンション。ものすごいスピードでびっくりする方向にボールを投げてくるギャグエロファンタジーになっています。とにかくオチが酷いんだ、これが(褒め言葉)。
テクニカルなネタ作品だけではありません。シリアスでしっとりした恋愛を描いた「赤い糸紬」は作者入魂の作品。ヒロインには運命の赤い糸が見えるという特殊能力があるのですが、自分だけは小指に赤い糸がない。告白してきた男の赤い糸は別の人につながっている。泣きながら笑うヒロインの顔と、そこからの自暴自棄っぷりなセックスシーンは、感情の暴走が描きこまれていて非常にエロティックです。
田倉氏の作品は確かに特異なシチュエーションが非常に多いのですが、キャラクター達の感情の抑え切れないパワーと高まりが魅力。リアル描写ではなくファンタジー設定でそれを活かすことで、ストッパーを外している部分は非常に大きいです。
エロマンガとしては尖った感が強いですし、ネタやオチのパワーが尋常じゃないのですが、読み終わって賢者モードになったとき、何かが心に残る不思議な作家です。
今回の作品集は前半が最近の作品、後半はかなり前の作品のサルベージ(単行本未収録)になっているので、その点前半・後半のギャップはありますが、いずれもエロ描写の強さはあるので見て損はありません。今回の作品集が気に入った方はその前の『たくらまかん展覧会』『たくらまかん動物園』もオススメ。
一度はまったら、もっともっとと見たくなる。超個性派にして極めて中毒性の高い作家ですよ。
(文=たまごまご/たまごまごごはん)