URAN『いちごま~ぶる』富士美出版
幼なじみがぼくは大好きでしてね。『ドラクエV』では絶対ビアンカしか選べない、『アマガミ』では梨穂子しか選べない、ってくらい幼なじみがたまらなく大好きなんです。そんな自分にとって、この『いちごま~ぶる』は福音であると同時に、男の性(サガ)を感じさせる強烈な作品でした。
幼なじみのヒロイン豊岡乙女が、上京した主人公・練の元にやってくるところから物語は始まります。はたから見るといわゆる「押しかけ女房」なんですが、実はこれには裏がある。昔二人は付き合っていたことがあったのですが、練の方が乙女に無理矢理過ぎるセックスをしてしまったのです。乙女は嫌がって泣きじゃくっていたのに肉欲に任せて犯してしまった……この一件をきっかけに練は乙女の元を去り、東京に逃げました。
そんなところに当の乙女が「うちは練ちゃんが好きやけん」とやってくるんですよ、据え膳食わぬは男の恥なんて言いますし、実際練も乙女のことをその後抱いちゃうんですが、心の中で困惑が渦巻いてしまいますよそりゃ! そんな簡単にモトサヤに戻れるなんて考えられない。最悪だ俺!
練がまた、罪悪感に苛まれているからこそ、「俺は嫌われよう」と乙女の嫌がりそうなことをわざとするんです。同情も感情移入も出来るんだけど、正直自分がその場にいたら襟首掴んでぶん殴りたくなるレベルのことしやがるんです。自分が他の女性とエッチしているのを乙女に知られている状態で、乙女にオナニーをしろというシーンのエロティックさと苛立ちはマキシマム。練、お前の気持ち分からんでもないが、やってること違うだろう、ふざけんな!……しかし乙女はすごいんです。すべて、本当にすべて練を受け入れるのです。
URAN氏の作品に出てくる女性たちは、皆非常に生々しい女臭さをたたえながらも、ものすごく器がでかいです。男の持つ激しい情欲や恋愛を描きながら、「女性側も、あなたのことがものすごく好きなんだよ」という、当たり前だけどエロ漫画では忘れてしまいがちな大切な部分を描いてくれます。男性の欲望の玩具ではない、一人の人間を愛する女として生きているのを描き上げるのです。
セックスシーンがとても悲しかったり、とても高揚感にあふれているのは、男性側の興奮と女性側の愛情が惜しみなく画面に注ぎ込まれているから。
一冊まるまる、不器用な青年と包容力のある少女の関係を描いたこの作品。二人だけではなくその他のキャラクターもまた人間関係を構築し、一歩ずつ育っている様も見物。セックスは快楽のためであるだけでなく、お互いの気持のぶつけあいなんだというのを再確認させてくれる良作です。
(文=たまごまご/たまごまごごはん)