「フーゾクに行きたいんだ!」と警察で号泣した男


 多少足りないというのであれば、何とかできたかもしれない。だが、たった4銭ではさすがに金一郎もどうにもできない。

「あと10日も我慢すれば、お給金がもらえるでしょう。1円もまとまってからまた来て下さいな…」

 金一郎がそうなだめて引き取ってもらおうとしたが、またしても清次郎、その場でわあわあと大声を上げて泣き出してしまった。

(またかよ…)

 あきれる金一郎や店の者たちがいくらなだめても、先般と同じように清次郎はまったく動こうとしない。もう手がつけられないと判断した店は、警察に連絡。清次郎は駆けつけた警視庁・洲崎分署の警官に連行された。そして警察官からコンコンと諭された。

 しばらくは大人しくしていた清次郎だったが、今度はその署内で号泣し始めた。

「信夫に会えないと、ボクは死んでしまいます!」

 そう叫びながら、ワーワーと泣きわめく始末。これには百戦錬磨の警官たちも手がつけられず、仕方なく警察署内でしばらく保護するハメになったという。

 その後、清次郎がどうなったのかはわからない。

 ちなみに、明治から昭和初期の新聞をめくると、遊郭に行きたいがためにいろいろな犯罪に手を染めるケースがいくつも見つかる。たとえば、学生が本を盗んでそれを売った金で遊郭に駆けつけるとか、遊郭に行く金欲しさに強盗するとか、「そこまでして行きたいのか」と思うような事例は多い。
(文=橋本玉泉)

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