4人の男たちは興奮した様子で口々に怒鳴り散らした。彼らは1対1では太刀打ちできなくとも、4人がかりなら彼女も弱気になると思ったのかもしれない。
ところがお菊さん、その男たちをこわがる様子もなく、涼しい顔でこう言った。
「それは申し訳ないことです。では、ちゃんと責任をとることにしましょう。さあ皆様、話し合いの上、私の身体を四つに分けてお持ちになってください」
そう言う彼女の言葉に、4人の男たちはさっきまでの元気はどこへやら、何も言い返せなかったという。
この勝負、男たちが4人で彼女のもとへ踏み込んだ時点で負けが確定している。「1対1では勝てない」ということを、その行動によって認めているに等しいからである。こういう感覚の男は、たとえ何人で束になろうとも、たった1人の心得のある者に勝てるわけがない。
それに対してお菊さんは、そんな男たちのカラ元気を瞬時に見抜いたのだろう。だから、「この身体、さっさと4つに分けてもっていって」と平気で言い放ったわけである。悪女とはいえ見事というほかはない。記事には書かれていないが、4人の男はそのまま逃げるように帰ったであろう。
(文=橋本玉泉)