「30歳の保健体育」。アニメもマンガも絶好調だ。
井ノ本リカ子版『30歳の保健体育(1)』
だいぶ前に『30歳の保健体育』という本が、発売されたのはご存じでしょうか。萌え絵を用いながら、アラサーをターゲットにした恋愛指南書……という名前のセックスハウツー本でした。ぶっちゃけ、これを買っても彼女はできません。その彼女をくださいよ、ハニー。
とはいえこの本のいいところは、セックス体験の有無じゃないんですよね。セックスのハウツーが知りたければ、そういう本はもう山ほど出ているわけで、そっちを読めばいいんです。だから割り切りましょう。これは「30歳の内気な男女が、えっちなことにドキドキするのをニヤニヤしながら見る作品なんだ」と。
瞬く間にこの本は人気を博し、気付いたらまさかのアニメ化。おいおい、どうやったってセックスから切り離せないんですが、アニメにしていいの!? もっとやれ! それに合わせるかのようなタイミングで、コミックスも三冊同時に刊行されます。4コマで恋のステップアップを描いた三宅大志版、恋のフラグを描いた冬凪れく版、そして実際の恋愛から実技までを描いた井ノ本リカ子版。
今回は中でも実用度の高い、井ノ本リカ子版をご紹介しましょう。実用って言ってもセックスに使うんじゃなくてオナニーに使うんだよ、当たり前じゃん。
井ノ本リカ子氏は、男女の純情恋愛を描かせたらピカイチの作家さん。特に恋している赤面の描写や、えっち中のとろけっぷりは天下一品と言っていいです。イチャラブものが好きなら、文句なしにどの作品もおすすめできます。
そんな作者が描く「30歳の保健体育」、どこに焦点を持っていくかと思いきや、一番強烈に描かれていたのは「女の子って意外とすごい」というところです。
アラサー男子にしてみたら、やっぱり女の子って「壊れそうだから、守らないといけないのかな」「嫌われたらどうしよう、自分うまく出来るんだろうか」という不安と常に隣合わせなわけですよ。恋愛経験が少なければなおのこと、多くたって不安なもの。男ってメンタルめちゃくちゃ弱いもんです。メール1通送るのも命がけですよ。
しかしこの作品は、男性目線を介しながら「女の子は好きな相手にこのくらい積極的なんだ」というのをぎっちり詰め込んでいるんですよ。前半は出会いから接近までで、お互い恋愛体験少ないためぎこちないラブなんですが、後半セックスに入るところに進んでいくと、女の子が背中を押す側に回るんです。1回目うまく行かなくて「もうだめだー」と主人公が欝になっていたところで、「今日、おうちに行ってもいいですか?」と勇気を振り絞って言い出すヒロインが、もう愛しくて死ぬ! 愛死ぬ!
18禁マンガではないのでエロシーンはそこまで多くありませんが、実際のエロを超越するくらい「この子を抱いているんだ」という満足感溢れる一冊。気持ちよさとあったかさは性器の感覚だけじゃなくて、恋愛感情が最大のエッセンスなのを思い出させてくれる素敵な一冊です。大人の初々しいカップルって、イイネー。
(文=たまごまご/たまごまごごはん)
小学生の頃は満点でした。
フラグブレイカーにならないためにも。
ホップ・ステップ・セックス!