【AV撮影現場今昔】 第4回:疾風怒濤のぶっかけブーム(後篇…または汁男優篇)

■「汁男優」が週末ビジネスに

 ぶっかけAVのブームが本格化するにつれ、1作品の中でのぶっかけシーンが占める割り合いも上昇し、例えばブーム最盛期の時点でワープの人気シリーズ『ドリームシャワー』などでは、15~30発のぶっかけシーン4、5回に加えてラストには50発以上の大量ぶっかけで締めくくるという圧倒的な“物量”を伴う内容になっていた。さらに恐ろしい(!?)ことに、各セルメーカーも追随しこのボリュームが業界標準となることに。それまではVHSで45分の作品が多かった“セルAV”も、この頃からVHSで90分がスタンダードになってきていた、という変化にも呼応したカタチだ。

 そして各メーカー、各制作会社の汁男優“争奪戦”が始まった…。

 出演ギャラもジワジワと上がりはじめ、ブームの最中には1回の出演で5,000円を出していたところもあったと記憶している(当時プロ男優の出演料は3万円前後)。中には「発射回数制」を採用する現場もあり、ぶっかけシーンの多い撮影や長丁場の大量ぶっかけ撮影などでは、発射した度にADクンのチェックを受け(発射1回につき腕に輪ゴムを1個はめられたりして)、2回、3回と発射できる“剛の者”にはギャラが積み上がるのだ。例えば、1発3,000円で当日3回発射できれば9,000円の稼ぎになり、ちょっとした飲み代やメシ代にはなる。実際、撮影の取材を終えてメシでも食おうと筆者が駅前の居酒屋や焼肉屋に入ってみると、さっきまで同じ部屋にいた汁男優の面々が談笑しながら飲んでいるのに出くわすこともあった。今となってはこれもまた懐かしい思い出だ(苦笑)。しかしブームの終焉に伴い、汁男優のギャラは残念ながら再び交通費程度の額に戻って現在に至っている。

 
■汁男優からプロ男優へ

 ブーム以前の、オナニーで無駄に放出するだけであった“汁”にニーズがあるという事態は、学校や仕事が休みの日に、趣味と実益を兼ねた汁男優をやってみようと考える男たちを生むことにもなった。実際、2001~2003年あたりのブーム最盛期には、週末の土日を中心に都内のスタジオで各社のぶっかけAVの撮影が行われ、それぞれの場所に汁男優たちが集うという、業界にとっては前代未聞の状況が訪れていた。その中には、1日の間にいくつかの撮影現場をかけもつ者さえいたのだ。カノジョがいない(いや、もちろんいてもいいが)独身男の週末の活動として考えれば、これもアリということだったのだろう。

 こうして、ぶっかけAV撮影の現場に集まった有象無象の素人の汁男優たちだが、やはり周囲は見ていないようで見ているもので、監督やスタッフは個々のパフォーマンスやルックスを吟味していたことも確かだ。監督らが現場で何度か見かけて見込みのある汁男優を撮影現場で“メジャー昇格”させることも少なくなかった。筆者の記憶が正しければ、真内賢司、まーくん(シノミヤまーくん)、TJ山本(TJ本田)などは、この時代に汁男優からステップアップしてプロ男優になった面々である。もちろん、筆者が知らないだけで他にももっといるだろう。

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