■現場で生まれた「潮吹き装置」
そこで考え出されたのが「擬似潮吹き」である。これを初めて撮影現場で目にしたときは、小さな感動を覚えると共に、ちょっと微笑ましい気分になったことを憶えている。2001年に取材したあるビデ倫の単体女優作品だった。創意工夫に溢れる現場スタッフによって、最初はその辺にあるもので即興的に作られた「潮吹き装置」は、いたって簡単な作りであった。2~3メートルの細長い透明なチューブをプラ製ボトル(この時は洗剤のボトル)の口にくっつけただけのものである。分かりやすくいえば、ストロー部分が異常に長いスポーツドリンクのボトルのようなものである。
椅子(ソファではなくリビングの木製の椅子など)に座った状態の女優の背後から、お尻の割れ目に挟むようにしてチューブを股間まで伸ばし、先端がアソコの部分にくるようにしてテープで固定するのだ。当時のビデ倫作品のモザイクは現在と比べようもなく荒かったため、このチューブやテープの存在も気づかれずに済んだ。
そして、男優による指責めシーンの撮影が開始される。椅子に座って大開脚ポーズの女優の股間をみっちりと責める展開で、入れたとしても指先が軽く入るくらいの指責めなのだが、動きの大きいアクションでド派手に責めたて、女優も徐々にアエギ声を高めていくのだ。女優が絶叫したところで、スタンバっていたADクンが水で満たされたボトルを両手で凹ませて、股間のチューブの先端からピューっと水が吹き出るのだ。あまり勢いよくやると単なるオシッコのように見えるので、ピュッ、ピュッと短く断続的に放出させたほうがリアリティがあり、そこがADクンの腕の見せ所でもあった。
撮影現場では往々にして「照明さん」や「音声さん」と役割でスタッフを呼ぶことも多いのだが、この役目を担当したADクンをみんなで「ポンプさん」と呼んで揶揄し、現場を笑いに包んでいたことも懐かしい思い出だ。
■“小道具は無用”めざましい女優の進化
この「潮吹き装置」と「ポンプさん」が活躍(!?)した期間は半年からせいぜい1年くらいだっだように思う。もちろん現在では有り得ない“小道具”だ。
本物の潮吹きは、まさに飛沫が飛び散るような具合なのだが、この「潮吹き装置」ではどうしてもそのリアリティを再現できなかった。そのことが短命に終わった大きな要因だと思うが、一番の原因は女優が大幅に「進化」したということに尽きる。特に2002年に、KMPがAV制作に本格進出してからの女優の進化ぶりにはめざましいものがあった。同社の看板シリーズ「イカセ4時間」は、当時の名だたる男優が総出演して女優をノンストップで責め続ける過激な内容で、瞬く間にAVファンの注目を集めた。
そこに毎回登場する男優の一人が、ご存じ「ゴールドフィンガー」こと加藤鷹だ。このシリーズに出演するAVアイドルたちは、加藤鷹の激しい指責めの洗礼を受け、続々と「潮吹き女優」へとレベルアップ(!?)していったのだ。デビュー時には清純系AVアイドルであった早坂ひとみや神谷沙織、杉浦美由らが次々と淫乱潮吹き女優へと大胆に変貌していき、AV界が確実に変わりつつあるという“新たな時代の息吹”を感じた時期でもあった。
そして、その後はメーカーを問わずに潮吹き女優のオンパレードの時代へ! 潮吹きはもはや人気女優の重要なスペックのひとつにもなり、紅音ほたる・藤井シェリー・小倉奈々から、現在大人気の上原亜衣など、潮吹き女優の全盛期は今なお続いている。このように「潮吹き」からも、この10年のAV界の激動ぶりが実によく分かるのである。
(文=宍戸ペダル)
宍戸ペダル(ししど・ぺだる)
前世紀からAVばかり見ているエロライター。AVレビュー、インタビュー、現場取材と目下大々的に(!?)活躍中!