<短期連載>

【AV撮影現場今昔】 第1回「擬似本番女優」の時代


■「擬似本番女優」もまた懐かしい“時代の申し子”

 今から思えば、既にこの2000年当時のAV界に変化は訪れていたのだが、まだまだ90年代のレンタルビデオ全盛時代の余波で、いくらでも需要のある状況にあったAV業界では、制作サイドは今よりもかなり強い立場にあったといえるだろう。制作サイドも強ければ、(単体)女優側も強かった。今は何もしなくてもAV女優志願者が事務所やメーカーに集まってくる(恐ろしい!?)時代だが、当時はスカウトマンが血眼になって単体で通用するAVモデルを探しまくっていた頃だ。ルックス的にあるレベルを越えていれば「本番NG」をメーカーに要求することも有り得る選択肢だったのだ。

 そしてなによりも、華々しくデビューした単体AV女優たちも、その活躍期間は1~2年というのがこの時代の通例だったことも大きい。1、2年後の引退を視野に入れてAVに出演する彼女たちが、特にセックス好きでない限りは本番NGだったとしても無理もないことだからだ。総じてこの時代、「擬似本番女優」とAV制作サイドは実に幸せな関係にあったといえるだろう。

 しかし、この後状況は一気に変わってくることになる。セルAV市場が徐々に拡大してくと共に、ビデ倫メーカーでの2年間の活動を終えた女優がその後“セルデビュー”を飾るというケースが増えてきたのだ。これによって、AV女優の寿命は大幅に伸びることになった。さらにセルAVでは「擬似本番」はご法度のため、その後のセル移籍を念頭にビデ倫時代から本番を解禁する傾向が高まり、一気に本番NG女優の数は減り、ご存じの通り現在はほぼ絶滅したといってよい。

 AV業界が辿ってきたこの過程を通じて、現在我々は15年前では考えられないほどのハイクオリティのAV作品を享受していることは確かだ。例えば新メーカー・TEPPANのラインナップなど、ハイレベルな企画単体女優陣を起用した充実した内容の作品群などは、15年前にはまったく考えられない種類の企画で、その質の高さにはただただ圧倒させられるばかりだ。

 ということで、賛否両論の多い「擬似本番女優」を振り返ってみたが、彼女たちもまた時代の申し子であり、知る者にとっては当時のAVを懐かしく思い起こさせるプレシャスな存在だと思う次第だ。それが誰だったのかは、ご想像にお任せするしかないのだが…。
(文=宍戸ペダル)

宍戸ペダル(ししど・ぺだる)
前世紀からAVばかり見ているエロライター。AVレビュー、インタビュー、現場取材と目下大々的に(!?)活躍中!

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