たとえばということで、過去の例を挙げてもらうと…。
「TOKIO・松岡昌宏がかつて主演したドラマ『天国に一番近い男』(TBS系)の設定は、“毎回、届く命題を時間内にクリアしないと死ぬ”というものですが、この脚本は、放送作家のおちまさと氏の手によるものです。この設定は完全にバラエティのノリですよね。また、06年に高橋克典が初の教師役に挑んだ『ガチバカ!』(TBS系)の脚本は、芸能プロダクションの浅井企画に所属する放送作家・楠野一郎氏が担当していましたが、平均視聴率は7.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)でした。ほかにも、バナナマンの座付き作家オークラ氏や、『がっちりマンデー!!』(TBS系)などのヒット番組を手がける都築浩氏など、多くの放送作家が脚本の世界に足を踏み入れていますが、なかなか『脚本家』ときちんと呼べる人材が育っていない」(同前)
また、あまり馴染みはないかもしれないが、放送作家はアニメの世界にも進出しているようだ。
「かつて、伝説的なバラエティ番組を担当していた女性の放送作家は現在、主にアニメの脚本を手がけていますが、ネット上では原作を改悪してしまう“原作クラッシャー”という声が一部で上がっています。さらに、かつて『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』(日本テレビ系)などを手がけていた放送作家も、数年前に低迷する『ドラえもん』(テレビ朝日)の視聴率アップのために、サブタイトルを週刊誌の見出しのような煽り文句にしたり、タモリや当時人気のあった韓流スターのペ・ヨンジュンを本編に絡めたりして、古参のファンから非難されていました」(同前)
もちろん、今回挙がっていない名前の中に一定の成功をおさめている人物もいるだろう。しかし、なぜ放送作家が脚本の世界に流れてくるのだろうか。
「まずは仕事上、バラエティ番組の中で再現VTRの台本を書く機会も多いことから、素人以上の知識と素養は持ち合わせているということが大きいです。さらに、バラエティの世界からドラマ畑に行くディレクターもいますから、そうした人脈の中で『どう? やってみる?』と声をかけられることが多いようです」(同前)
また、調べてみると、本業の脚本家に「使える」人材が少ないということも背景にはあるようだ。『半沢直樹』(TBS系)のように骨太な作品が受け入れられる一方で、今回の『奇跡の教室』のように気軽に見られるバラエティ的なドラマも存在する。後者が必要とされる限り、バラエティ放送作家の出番はまだまだ減らないのかもしれない。
(文=今井良介)