だが、前回の1位で満足したのか今回の総選挙では中国掲示板の“指原板”で投票権付きCDの購入額が減少し、必勝を期した“まゆゆ板”が台頭した。富裕層だけでなく、一般の“まゆゆ板”住人も代表者が大手通販サイトに出店して資金を募るという形で参戦。集まった資金を日本に送金し、それを受け取った日本のファンがCDを購入して投票シリアルナンバーを中国人ファンに教えるという手の込みようだった。また、中国のオークションサイトでも投票権の売買が盛んに行われた。その結果、中国から約3000万円という大金が日本のアイドルイベントにブチ込まれるに至ったようだ。現地メディアによると“指原板”は「私たちの力が足りなかった。来年こそ…」と意気消沈し、一方の“まゆゆ板”は「まゆゆ皇帝万歳!」とお祭り騒ぎになっているという。
前回は指原を強力にサポートした「中華票」だが、皮肉にも今回はそれが敗北の原因になってしまった。ここまで影響力のある中国のAKBファンとは、どのような存在なのか。
「反日感情があるとされる中国ですが、日本のアイドル文化に対するあこがれは非常に強く、若い世代を中心にAKBは現地のアイドル以上の人気があります。渡辺はAKBメンバーとして中国を訪れたことは一度もありませんが、なぜか現地では熱狂的タイプのファンが多い。渡辺のファンは『玉林軍』と呼ばれ、彼女のトップ当選が決定した夜は興奮した自分の写真をネット上に投稿するファンであふれた。しかし、彼らは浮かれているばかりでなく、すでに来年に向けて準備を始めている。油断した指原ファンの失敗を教訓にしているようです」(アイドルライター)
また、共産党一党支配の中国では国民に選挙の経験がなく、自分たちが参加できる身近な選挙として選抜総選挙に熱を上げている側面もあると指摘されている。
これまで中国・上海の「SNH48」やインドネシア・ジャカルタの「JKT48」といった海外展開を積極的に仕掛けてきたAKBグループだが、もはや選抜総選挙も国内票だけ気にしていればいいという状況ではなくなったようだ。特に富裕層が増加した中国は無視できない存在。今後は中国ファンを意識した振る舞いで票を稼ごうとするメンバーも現れそうである。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)