伝説の鬼畜ライター「村崎百郎」の記念館が完成! 妻・森園みるくが語る“鬼畜”の素顔

伝説の鬼畜ライター「村崎百郎」の記念館が完成! 妻・森園みるくが語る鬼畜の素顔の画像3怪しすぎる「村崎百郎館」の展示風景。退廃美と電波が漂っている

■村崎百郎の多重人格性

──人格がたくさんあったということですが、村崎さんのキャラクターはメディア向けではなく、実際に“電波系”だったということでしょうか。

森園:よくいわれている「ポーズで鬼畜をやっていた」「本当はただのいい人だった」とか…。そういった誤解は多いんですけど、それは大きな間違いで。本当に彼は「鬼畜」でした。そして同時に「いい人」でもあったんです。

──それは村崎さんと高校時代から親交のある作家の京極夏彦さん(※)も追悼文で書かれていますね。決して「鬼畜」を演じていたわけではなく、自分の中にある「鬼畜」の部分と向き合い、自己正当化して正常を装うことを良しとしなかった人だと。

きめら:自分で鬼畜を名乗ることで、村崎さんにとっても世の中を生きやすくし、そういうことで悩んでいる人に対してもメッセージを送れると考えていた部分もあると思いますね。ちゃんと村崎さんの文章からメッセージを受け取ってくれる読者もいるし、そういう意図が上手く伝わらない人もいた。むしろ、村崎さんの文章を「下品」「露悪的」って毛嫌いしちゃう人の方が多かったのかもしれません。

森園:多分、本人は読者にきちんと伝わるとは期待してなかったと思う。

──お二人は村崎さんが亡くなるまで最も近い場所にいたと思いますが、村崎さんと出会ったきっかけをお聞かせください。

森園:出会ったのは、ちょうど村崎が『鬼畜のススメ』(※)を書いていたころですね。仲良くしていた映画監督さんの新作映画の上映会に行ったとき、村崎がトークショーのゲストだったんですよ。そこで監督さんに紹介されたのが最初です。

──村崎さんは出会う前から森園さんのファンだったそうですね。

森園:そうだったみたいですよ。私のマンガを結構読んでくれていたみたいで。私も元々『悪趣味大全』(ユリイカ増刊/青土社)とかで彼の文章を読んで、スゴイ…というかヤバイ(笑)と思ってたので。それで意気投合した感じですね。

──村崎さんに対する最初のイメージはどうだったんでしょうか。

森園:ああいう文章を書いているけど、本心はまた違うところにあるんだろうなとか、知識がハンパないだろうなとか、思っていたんですけど…まさか本当にヤバイ人だったとは…と驚くことになりました。

──きめらちゃんはどんな出会いだったんですか。

きめら:高校生のころです。当時、精神的にすごく調子が悪かったんですけど、学校の帰り道の古本屋にあった「GON!」(ミリオン出版)という雑誌で村崎さんの連載『魁!鬼畜塾』を読んで心から笑ったんですよ。多分、そんなに笑ったのは小学生以来ってくらい。それが村崎さんとの最初の出会いです。それから毎月「GON!」を買うようになって。

──『魁!鬼畜塾』もとんでもない連載でしたからね。

きめら:それからファンレターのようなメールを送りました。この人だったら私を分かってくれるというか、とにかく自分の思いを伝えたくなって。そしたら「俺の姿を見たいんだったら、その辺のコジキを見てろ」ってメールが返ってきて…。そんなつもりじゃないって思ったんですけど(笑)。それからなぜかメールのキャッチボールが始まって距離が縮まり、家が近かったこともあって実際に村崎さんや森園さんとお話させてもらうようになった感じですね。

──厳しいイメージがありますけど、意外とファンと仲良くするタイプだったんでしょうか。

森園:いや、そういうのは珍しんですよ。村崎ってファンを受け入れない人だったから。

──これは特別なケースで、ファンとは基本的に距離を置いていたと。

森園:かなりヤバいファンレターがたくさんきていましたし、自分のヌードやウンチの写真を送ってくる女性ファンまでいましたからね。それは受け入れられないですよ(笑)。むしろファンを嫌ってましたね。イベントとかでも、絶対にファンには近付かなかったですし。サインを求められてもほとんど無視してましたよ。

きめら:きっと、自分のファンは危ないって分かってたんじゃないかと思います。

※京極夏彦:北海道小樽市出身。言わずと知れたベストセラー作家。代表作は『姑獲鳥の夏』(講談社)『魍魎の匣』(同)『死ねばいいのに』(同)『ルー=ガルー 忌避すべき狼』(徳間書店)など多数。北海道倶知安高校で村崎氏の一年後輩だった。村崎氏とは旧知の仲であり、デビュー後に対談もしている。

※鬼畜のススメ―世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!!:96年9月にデータハウスから出版された村崎氏の単著。「鬼畜的生き方の入門書」としてゴミ漁りのノウハウやゴミから見える人間の本質を徹底解説。ゴミの種類や季節・地区別の傾向、ゴミ漁りの最大の敵「警官」対策なども網羅。現在は事実上の絶版状態で復刊が待たれる。

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