酒井の衝撃的なカミングアウトを真に受け、真摯に対応する吉村の態度は、ネット上で「いいやつだな」「男気あるな」「優しい」などと絶賛されている。もちろん、破天荒とは程遠い吉村の行動を「つまらない」「ひとつも面白くない」と非難する声もあるが、近頃のバラエティでは、そもそも吉村自身が自分の破天荒キャラをネタ扱いすることも多く、人の良さとのギャップで笑いを取っている。単に「破天荒のクセに」と批判するのは見当違いだろう。
たとえば、15日深夜に放送された『有田のヤラシイ…』(TBS系)で吉村は、若手だったころ新宿の居酒屋で飲んでいた相方の徳井健太(33)に深夜いきなり呼び出され、会計だけを頼まれたたエピソードを披露している。徳井の行動に腹を立てた吉村は、居酒屋を出たところで「どういうことだよ」と詰め寄ったが、突然胸ぐらをつかまれボコボコにされたというのだ。何とも理不尽な話だが、そこから見えてくるのは、平成ノブシコブシにおいて“破天荒”とは、むしろ徳井であるということ。そもそも吉村は“いい人”なのだ。
冒頭に記した「先輩芸人に対して臆することなく突っかかり」というのも、TKOの木下隆行(42)や我が家の杉山裕之(37)であり、事務所も違えば、全国区の冠番組を持っているような芸人ではない。当たり障りのない人選ともいえるだろう。破天荒を自称するなら、本来もっときわどいところを攻めてもよさそうだが、そうした気弱なところが垣間見えてしまうのも吉村の魅力的な部分といえる。強がっている姿が可愛らしく見えるという人もいるのではないだろうか。それが芸人としてどうなのかは別にして、今の吉村はまさにその破天荒キャラと本当はいいヤツキャラの狭間に立っている。今後、彼がどう自らのキャラを展開していくのか見ものだ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)