何度も繰り返すが、これはナイツが台本を用意した自作自演インタビュー。つまり、「実質、優勝じゃないですか?」という言葉は彼らの本心とも取れるわけだ。そして、さらに話題が「THE MANZAI」に及ぶと、ここでもインタビュアーは、優勝したパンクブーブーに続いて2位だったナイツに向かって「実質優勝ですよね?」と言い、ついに塙の口から、「第1回目の大会で、吉本主催で始まって、審査員の人も吉本の人間ばっかりで、吉本以外の芸人に優勝させちゃいけない、みたいなのはあると思いますけど…それ言っちゃダメ」と思いのたけをぶちまけたのだった。
さらにナイツは、大御所ビートたけし(67)から、「実力で売れたんだよな」と言われたことがあるというエピソードをインタビュアーに披露させると、「リップサービスですよ」と照れていたが、そうした言動からは、暗に事務所の力で売れた芸人を批判しているようでもあった。
そうしたナイツの言葉のすべてがどこまで本音かどうかはともかく、見事だったのは、吉本への皮肉や今のゴリ推し風潮に対する批判的な言葉のすべてを笑いに昇華していた点に尽きる。まさに漫才師ならではの言葉使いと間で、嫌味な発言の数々を笑いにもっていった技量はさすがだった。しかも、インタビュー中には、浅草の師匠の名前を出すなど、自分たちを育ててくれた浅草への感謝を織り交ぜ、漫才愛に満ちていた。「生涯、漫才師」と塙は言っていたが、それこそまさに彼らの本音なのだろう。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)