「神回」ならぬ「紙回」も!? 視聴者待望、久々のエロ系昼ドラへの期待


 次に姑役の丘みつ子。妊娠しやすい身体作りにとヒロインに能の稽古を強要するのはまだ可愛いもので、明け透けに次の生理日を聞き、おととい終わったばかりなのでまだ先と知るや否や「夕べは無駄打ちってことじゃない?」と仰天発言。次の排卵がいつになるかちゃんと計算して息子を無駄に疲れさせるなと、夫婦生活にまで介入してくる、恐るべしキャラクターだ。衣装でしょっちゅう着用している割烹着は、小保方晴子氏の騒動に絡めたものなのか気になるところ。

 不妊治療がスタートしてからは、一時的に和睦関係となった姑とヒロインが、朝っぱらから食卓で精子だの受精卵だの上流階級とは思えない会話を繰り広げる。病院院長で夫役の原田龍二の、あまりにも現実的な女性たちへの苦悩っぷりがまた面白い。内診台の上で、自分の弟に足を広げているであろう妻に対し、「僕のだ! 僕だけのものだ! 聖美のカラダは俺のものだ!」とベッドに潜り込みゴソゴソ……何をやっているかは容易に想像がつく。昼ドラは、毎週金曜日がもっとも盛り上がる「神回」と呼ばれているが、4月4日の放送では離婚届の用紙を食べる怪演で、ファンの間からは「まさに紙回!」と称賛の声があがった。

 出演者はかなりの熱演を見せているが、それでも一部のファンからは「もっとぶっ飛んだシーンは出てこないのか?」と欲求不満な声があがっている。そこには「大人の事情」が隠されているのであろう。『聖母・聖美物語』の脚本は、いずみ玲。2012年の年末に同じ昼ドラ枠で放送された『幸せの時間』(制作:東海テレビ)と同じ脚本家だ。『幸せの時間』といえば、その過激すぎる性描写に視聴者からの苦情が多数寄せられ、ついにはBPO(放送倫理・番組向上機構)から指摘を受けるほどの騒ぎとなった。(参考記事『「昼ドラがエロすぎて減給処分」の騒動に悲観する昼ドラ愛好家の声』)そのため、『聖母・聖美物語』にはどこか慎重さが感じられるのかもしれない。

 「大人の事情」はわからなくもないが、昼ドラのメイン視聴者である主婦層が望んでいるのは、ドロドロ・エロエロの愛憎劇のはず。『幸せの時間』から1年3カ月、ぼちぼちほとぼりも冷めてきた頃だろうし、『聖母・聖美物語』の今後には、是非とも攻めの姿勢を期待したいところだ。
(文=菊池美佳子)

菊池美佳子(きくち・みかこ)
1977年3月17日生まれ。岩手県盛岡市出身。21~29歳の間、キャバクラ嬢・テレフォンセックス嬢・企画物AV嬢としても活動。引退後、文筆業に転身。
■著書:『2010年代 ニッポンの風俗』『つけちゃうぞ! 大人の保健体育』
『テレフォンセックス裏物語』『Sの妹Mの彼女』

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