AV女優であって舞台女優や映画女優…それが普通な時代は確実に近づいている

 つい先頃、神咲詩織のTwitterでの「AV女優だって普通の人間で普通の女の子なんだってわかってもらいたい」という発言が、ネットで物議を醸した。「普通」って何だろう?

 一昔前はテレビなどにAV女優が出演するのは話題作り、つまりは宣伝効果を得るためというのが普通だった。ただし逆にテレビ主演で話題になったことでAV界を飛び出すような活躍をするコが出たことも間違いない。記憶に新しいところでは、テレビ東京のバラエティ番組『ゴッドタン』内のコーナー「キス我慢選手権」で話題になったみひろであり、戦隊ヒーロー番組『炎神戦隊ゴーオンジャー』で害水大臣ケガレシアという悪のヒロインを1年通じ演じた及川奈央だろうか。

 先頃“AV女優として”とは少々違い、演者として舞台や映画に出演している女の子の話題を知る機会があった。『劇団ストレイドッグ』の森川利行氏が作・演出を務める舞台『母の桜が散った夜』『閨房のアライグマ』に出演しているアリスJAPAN専属女優・川上奈々美と、売春婦を意味するストリートスラング「HO(ホー)」をタイトルにした渋谷の街角に立つ売春婦の末路を東日本大震災後の日本の厳しい現実と絡め描いた映画『HO~欲望の爪痕』に出演しているMAXING専属女優・横山美雪の2人の話である。

 自身の作品を主観と客観を交えながら解説する「自画自賛コーナー」が、AVライターの立場から見ても楽しめ、以前からしばしば拝読していた川上奈々美のブログ「みぃななの飾らないままに」を遡れば、彼女が元々芝居への情熱を持っていた女の子だと分かる。自身の写真よりも彼女が今見ている景色がそのまま目に飛び込んでくるような風景写真が目を引く横山美雪のブログを見れば、彼女が映画の企画段階から参加しスタッフと共に主演映画を作り上げてきたことが感じられる。

 先日作品レビューの仕事で、川上奈々美の3月リリースのAV作品『お下品なフェラチオでしゃぶらせて』と、横山美雪の4月リリースのAV作品『インテリ痴女家庭教師』を観る機会を得た。そこでは、川上奈々美が男優の小さな口を目一杯に広げデカマラをしゃぶり、時に脚で押さえられ喉深くまで飲み込まされる姿を見せ、ファックでは息を詰まらせるような悶え姿を見せ、仰け反りながら「イッちゃう…」と顔射を受けていた。横山美雪が「家庭教師は密室で生徒と恋愛ゲームをする。「勝者いつも私」とモノローグし、生徒を相手に顔騎クンニし、足コキをお見舞いし、合格のご褒美に身体を供しつつ自らも快感に浸る姿を見せていた。そこには、今までと全く変わることのない川上奈々美と横山美雪の姿があった。

 テレビドラマの中で『日活ロマンポルノ』で活躍した女優たちの姿を目にすることがある。視聴者の多くは、彼女たちがポルノ女優だったことすら意識しない。一昔前であれば、男性向け週刊誌などで話題になっていたが…。多分AV女優がテレビに出ることも、しばらくすれば普通のことになるのだろうね。ただし、パイオニアは必要。もちろん他にも居るけれど、その1人が川上奈々美であり、横山美雪だろうと思う。今は色々と偏見もあって大変だとは思うけれど。

 世の中に不変なモノなんて何もない。国や宗教、いや住む地域がちょっと違うだけで「普通」なんていっぱいある。彼女たちがAV女優の「普通」を作り出すことに、ちょっとでも参加できれば嬉しいのだけれど。
(文=浅見光弘)

浅見光弘プロフィール
果物系と呼ばれた古式ゆかしき某AV情報誌編集者として業界に携わり、浮き沈みしつつ水遁の術でライターとして何とか生息。

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