しかし、そんな笑いの彼方に、なぜか胸を締め付けるようなセンチメントが訪れるのは、一体なぜなのか。それは、この映画が基本的に「無意味」だからだろう。男たちはなぜ走るのか、なぜ行く先々で素人女性を口説くのか、そして、そもそもなぜレースに勝ちたいのか。恐らく、そのすべてに意味はない。だが、無意味なことに全力を注ぎ込む男たちの姿は、たまらなく美しい。身も心もボロボロになりながら、それでもただ勝利を目指して、全身全霊をかけて突き進む男たち。その様子は、やがて女たちの心をも動かしてゆくのだった……。
そのクライマックスは、大方の予想とは異なり、レースを終えたあとにスタッフ全員で乗り込んだ、帰路のフェリーの中で訪れる。秀逸な「ロードムービー」のごとく、長い道中で育まれたさまざまなドラマは、それぞれの秘めたる思いや決意と共に、フェリーの中でそれぞれの結末を迎えてゆく。カメラを構えながら女優に語りかけるカンパニー松尾が号泣し、その顛末を見届ける観客たちも、思わず感極まって涙ぐんでしまうような、実にエモーショナルなシーン。そこに映し出されるのは、もはや何者でもない、すべての「ルール」から解き放たれた、ありのままの男と女の姿なのだった。なんという展開! そして、なんという結末!
大根仁、松江哲明、山下敦弘など、本シリーズを愛してやまない豪華トークゲストを連日招きながら、去る2月15日から20日まで、オーディトリウム渋谷で限定公開された『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』。公開直後から口コミで瞬く間に広がり、気がつけば連日満員の大盛況に終わった本作の再上映が、来る3月15日から25日まで、同じくオーディトリウム渋谷で決定した!(ただし21日は休映)
すでに発売済みのオリジナル10時間版を、夜中に家でひとりじっくりと堪能するのもいいだろう。しかし、できることなら是非、不特定多数の人々が集う映画館という場所で、この劇場版を観ることを強くオススメしたい。スクリーンに映し出される男たちの一挙一動が、文字通り一糸まとわぬむき出しの男たちの生き様が、観る者の心にビシビシとダイレクトに突き刺さっていくという、いまだかつて感じたことのないような「ライヴ感」は、やはり映画館ならではのものだ。
というか、この手の映画を、これほどまでに多くの人々と一緒に観る機会など、ほとんどの人にとってはないだろう。そこにあるのは、まさしく未体験ゾーン。しかし、観終えたあとは、なぜか晴れやかな気分なのである。
老若男女問わず、劇場を出る誰もが清々しい表情を浮かべていたのは、きっと気のせいではない。絶頂に達したあとはただ萎んでいくだけの「経験」ではなく、観終えてからも心の奥底に、いつまでも残り続けてしまうような「体験」。そんな激烈な体験が、そこで待っているのだ。何はともあれ、お見逃しのないように!
(文=麦倉正樹)
■作品情報
『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』
6人の男たちが、東京から仙台、青森を経由して札幌まで、車3台、バイク2台でレースしながらテレクラやナンパ、その他各種出会い系を駆使して現地素人をハメ倒す痛快セックスバトルドキュメント。最後に優勝者に“贈られる”ボールガールには、13年で完全引退したAVアイドル神谷まゆと、奇跡のカラダを持つ新山かえでの2名。果たして狂気のデスレースを制するのは誰か? 史上最強、最悪の抱腹絶倒ドキュメント、ここに誕生。
監督/カンパニー松尾
出走者/カンパニー松尾&CBR600F、バクシーシ山下&MR-S、ビーバップみのる(無免許)、タートル今田&アルファード3.0G、梁井一&GSX1200S 、嵐山みちる&クライスラー300C
出演女性:神谷まゆ、新山かえで、仙台&札幌の素人20人
テーマ曲:Weekday Sleepers「passionfruits telecrider」
企画・制作・著作・発売/有限会社ハマジム
3月15日(土)~25(火)までオーディトリウム渋谷にて再上映予定
ただし21日(金)は休映。また日によって上映時間が異なるので、詳しくは劇場公式サイトにてご確認ください。
■オーディトリウム渋谷
<http://a-shibuya.jp/archives/8691>
■『劇場版 テレクラキャノンボール2013』 特報映像
<http://youtu.be/rvIZuVLQboM>
また、3月22日(土)24時からは、同じくオーディトリウム渋谷にて、『テレクラキャノンボール2013』出走全6監督によるオールナイト・トークイベント『テレクラキャノンボール2013 6D』も開催。なんと、バクシーシ山下監督の伝説の発禁AV『死ぬほどセックスしてみたかった。』も上映予定なので、V&R系のマニアAV作品好きはぜひともご来場あれ!
■トークイベント詳細
<http://a-shibuya.jp/archives/9547>